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〘564㌻〙

第1章

1 サウルの死しにし後のちダビデ、アマレク人びとを擊うちてかへりチクラグに二日ふつかとゞまりけるが 2 第三日みつかに及およびて一個ひとりの人ひと其その衣ころもを裂さき頭かしらに土つちをかむりて陣ぢん營えいより即すなはちサウルの所󠄃ところより來きたりダビデの許もとにいたり地ちにふして拜はいせり 3 ダビデかれにいひけるは汝なんぢいづくより來きたれるやかれダビデにいひけるはイスラエルの陣ぢん營えいより逃󠄄のがれきたれり 4 ダビデかれにいひけるは事こといかん請󠄃こふ我われにつげよかれこたへけるは民たみ戰たたかひに敗やぶれて逃󠄄にげ民たみおほく仆たふれて死しねりまたサウルと其その子こヨナタンも死しねり 5 ダビデ其そのおのれにつぐる少者わかきものにいひけるは汝なんぢいかにしてサウルと其その子こヨナタンの死しにたるをしるや 6 ダビデにつぐる少者わかきものいひけるは我われはからずもギルボア山やまにのぼり見みしにサウル其その槍やりに倚よりかかりをりて戰車いくさぐるまと騎兵きへいかれにせめよらんとせり 7 彼かれうしろにふりむきて我われを見み我われをよびたれば我われこたへて我われここにありといふ 8 かれ我われに汝なんぢは誰たれなるやといひければ我われかれにこたへて我われはアマレク人びとなりといふ 9 かれまた我われにいひけるはわが身みいたく攣つれば請󠄃こふ我わがうへにのりて我われをころせわが生命いのちなほわれの中うちにまつたければなりと 10 我われすなはちかれの上うへにのりてかれを殺ころしたり其そは我われかれが旣󠄁すでに仆たふれて生いくることをえざるをしりたればなりしかして我われその首かうべにありし冕󠄅かんむりとその腕うでにありし釧うでわを取とりてこれをわが主しゆに携たづさへきたれり

11 是こゝにおいてダビデおのれの衣ころもを執とりてこれを裂さけりまた彼かれとともにある者ものも皆みなしかせり 12 彼等かれらサウルのためまた其その子こヨナタンのためまたヱホバの民たみのためイスラエルの家いへのために哭なきかなしみて晩よひまで食󠄃しよくを斷たてり其そは彼かれら劍かたなにたふれたればなり 13 ダビデおのれに吿つげし少者わかきものにいひけるは汝なんぢは何處いづくの者ものなるやかれこたへけるは我われは他國たこくの人ひとすなはちアマレク人びとなりと
 564㌻ 
14 ダビデかれにいひけるは汝なんぢなんぞ手てをのばしてヱホバの膏あぶらそそぎし者ものをころすことを畏おそれざりしやと 15 ダビデ一人ひとりの少者わかものをよびていひけるは近󠄃ちかよりてかれをころせとすなはちかれをうちければ死しねり 16 ダビデかれにいひけるは汝なんぢの血ちは汝なんぢの首かうべに歸きせよ其そは汝なんぢ口くちづから我われヱホバのあぶらそそぎし者ものをころせりといひて己おのれにむかひて證あかしをたつればなり

17 ダビデ悲かなしみの歌うたをもてサウルと其その子こヨナタンを吊とむらふ〘432㌻〙 18 ダビデ命めいじてこれをユダの族ひと〴〵にをしへしむ即すなはち弓ゆみの歌うた是これなり是これはヤシル書しよに記しるさる 19 イスラエルよ汝なんぢの榮耀󠄃かがやきは汝なんぢの崇邱たかきところに殺ころさる嗚呼あゝ勇󠄃士ますらをは仆たふれたるかな 20 此事このことをガテに吿つぐるなかれアシケロンの邑まちに傳つたふるなかれ恐おそらくはペリシテ人びとの女等むすめら喜よろこばん恐おそらくは割󠄅禮かつれいを受うけざる者ものの女等むすめら樂たのしみ祝いははん 21 ギルボアの山やまよ願ねがはくは汝なんぢの上うへに雨露つゆ降󠄄くだることあらざれ亦また供物そなへものの田園はたけもあらざれ其そは彼處かしこに勇󠄃士ますらをの干たて棄すてらるればなり即すなはちサウルの干たて膏あぶらを沃そゝがずして彼處かしこに棄すてらる 22 殺ころせし者ものの血ちをのまずしてヨナタンの弓ゆみは退󠄃しりぞかず勇󠄃士ますらをの脂あぶらを食󠄃くはずしてサウルの劍つるぎは空󠄃むなしく歸かへらず 23 サウルとヨナタンは愛あいらしく樂たのしげにして生いき死しにともに離はなれず二人ふたりは鷲わしよりも捷はやく獅子しゝよりも强つよかりき 24 イスラエルの女等むすめらよサウルのために哀なげけサウルは綘あかき衣ころもをもて汝等なんぢらを華麗󠄃はなやかに粧よそほひ金こがねの飾󠄃かざりを汝等なんぢらの衣ころもに着つけたり 25 嗚呼あゝ勇󠄃士ますらをは戰たたかひの中なかに仆たふれたるかなヨナタン汝なんぢの崇邱たかきところに殺ころされぬ 26 兄弟きやうだいヨナタンよ我われ汝なんぢのために悲慟かなしみむ汝なんぢは大おほいに我われに樂たのしき者ものなりき汝なんぢの我われをいつくしめる愛あいは尋󠄃常よのつねならず婦󠄃をんなの愛あいにも勝󠄃まさりたり 27 嗚呼あゝ勇󠄃士ますらをは仆たふれたるかな戰たたかひの具󠄄うつはは失うせたるかな

第2章

1 此こののちダビデ、ヱホバに問とひていひけるは我われユダのひとつの邑まちにのぼるべきやヱホバかれにいひたまひけるはのぼれダビデいひけるは何處いづくにのぼるべきやヱホバいひたまひけるはヘブロンにのぼるべしと
 565㌻ 
2 ダビデすなはち彼處かしこにのぼれりその二人ふたりの妻つまヱズレル人びとアヒノアムおよびカルメル人びとナバルの妻つまなりしアビガルもともにのぼれり 3 ダビデ其そのおのれとともにありし從者じふしやと其その家族かぞくをことごとく將ひきゐのぼりければ皆みなヘブロンの諸巴まち〳〵にすめり 4 時ときにユダの人々ひと〴〵きたり彼處かしこにてダビデに膏あぶらをそそぎてユダの家いへの王わうとなせり   人々ひと〴〵ダビデにつげてサウルを葬はうむりしはヤベシギレアデの人ひとなりといひければ

5 ダビデ使󠄃者つかひをヤベシギレアデの人ひとにおくりてこれにいひけるは汝なんぢらこの厚あつき意こゝろを汝なんぢらの主しゆサウルにあらはしてかれを葬はうむりたればねがはくは汝なんぢらヱホバより福祉さいはひをえよ 6 ねがはくはヱホバ恩寵めぐみと眞󠄃實まことを汝等なんぢらにしめしたまへ汝なんぢらこの事ことをなしたるにより我われ亦また汝なんぢらに此この恩惠めぐみをしめすなり 7 されば汝なんぢら手てをつよくして勇󠄃いさましくなれ汝なんぢらの主しゆサウルは死しにたり又󠄂またユダの家いへ我われに膏あぶらをそそぎて我われをかれらの王わうとなしたればなりと〘433㌻〙

8 爰こゝにサウルの軍ぐんの長かしらネルの子こアブネル、サウルの子こイシボセテを取とりてこれをマナイムにみちびきわたり 9 ギレアデとアシユリ人びととヱズレルとエフライムとベニヤミンとイスラエルの衆ひと〴〵の王わうとなせり 10 サウルの子こイシボセテはイスラエルの王わうとなりし時とき四十歳さいにして二年ねんのあひだ位くらゐにありしがユダの家いへはダビデにしたがへり 11 ダビデのヘブロンにありてユダの家いへの王わうたりし日ひ數󠄄かずは七年ねんと六ヶ月󠄃げつなりき

12 ネルの子こアブネル及およびサウルの子こなるイシボセテの臣僕けらい等たちマハナイムを出いでてギベオンに至いたれり 13 セルヤの子こヨアブとダビデの臣僕けらいもいでゆけり彼かれらギベオンの池いけの傍かたはらにて出會いであひ一方いつぱうは池いけの此畔󠄃こなたに一方いつぱうは池いけの彼畔󠄃かなたに坐ざす 14 アブネル、ヨアブにいひけるはいざ少者わかものをして起󠄃たちて我われらのまへに戯たはむれしめんヨアブいひけるは起󠄃たゝしめんと 15 サウルの子こイシボセテに屬ぞくするベニヤミンの人ひと其その數󠄄かず十二人にん及およびダビデの臣僕けらい十二人にん起󠄃たちて前󠄃すゝみ 16 おのおの其その敵手あひての首くびを執とらへて劍かたなを其その敵手あひての脅わきばらに刺さし斯かくして彼等かれら俱ともに斃たふれたり是故このゆえに其その處ところはヘルカテハヅリム(利劍つるぎの地ち)と稱󠄄となへらる即すなはちギベオンにあり
 566㌻ 
17 此これ日ひ戰たたかひ甚はなはだ烈はげしくしてアブネルとイスラエルの人々ひと〴〵ダビデの臣僕けらいのまへに敗やぶる

18 其處そこにゼルヤの三人にんの子こヨアブ、アビシヤイ、アサヘル居ゐたりしがアサヘルは疾足あしばやなること野のにをる麆しかのごとくなりき 19 アサヘル、アブネルの後あとを追󠄃おひけるが行あゆに右左みぎひだりにまがらずアブネルの後うしろをしたふ 20 アブネル後うしろを顧󠄃かへりみていふ汝なんぢはアサヘルなるか彼かれしかりと答こたふ 21 アブネルかれにいひけるは汝なんぢの右みぎか左ひだりに轉向むかひて少者わかものの一人ひとりを擒とらへて其その戎󠄂服󠄃よろひを取とれと然されどアサヘル、アブネルをおふことを罷やめて外ほかに向むかふを肯がへんぜず 22 アブネルふたゝびアサヘルにいふ汝なんぢ我われを追󠄃おふことをやめて外ほかに向むかへ我われなんぞ汝なんぢを地ちに擊うち仆たふすべけんや然しかせば我われいかでかわが面かほを汝なんぢの兄あにヨアブにむくべけんと 23 然しかれどもかれ外ほかにむかふことをいなむによりアブネル槍やりの後銛いしづきをもてかれの腹はらを刺さしければ槍やりその背後うしろにいでたりかれ其處そこにたふれて立時たちどころに死しねり斯かかりしかばアサヘルの仆たふれて死しねるところに來きたる者ものは皆みなたちどまれり

24 されどヨアブとアビシヤイはアブネルの後あとを追󠄃おひきたりしがギベオンの野のの道󠄃みち傍ばたにギアの前󠄃まへにあるアンマの山やまにいたれる時とき日ひ暮くれぬ 25 ベニヤミンの子孫ひと〴〵アブネルにしたがひて集あつまり一隊󠄄いつたいとなりてひとつの山やまの頂いたゞきにたてり 26 爰こゝにアブネル、ヨアブをよびていひけるは刀劍かたな豈あに永久とこしへにほろぼさんや汝なんぢ其その終󠄃をはりには怨恨うらみを結むすぶにいたるをしらざるや汝なんぢ何時いつまで民たみに其その兄弟きやうだいを追󠄃おふことをやめてかへることを命めいぜざるや〘434㌻〙 27 ヨアブいひけるは神かみは活いく若もし汝なんぢが言いひ出いださざりしならば民たみはおのおの其その兄弟きやうだいを追󠄃おはずして今晨あさのうちにさりゆきしならんと 28 かくてヨアブ喇叭らつぱを吹ふきければ民たみ皆みなたちどまりて再ふたゝびイスラエルの後あとを追󠄃おはずまたかさねて戰たゝかはざりき 29 アブネルと其その從者じふしや終󠄃夜よもすがらアラバを經へゆきてヨルダンを濟わたりビテロンを通󠄃とほりてマハナイムに至いたれり
 567㌻ 

30 ヨアブ、アブネルを追󠄃おふことをやめて歸かへり民たみをことごとく集あつめたるにダビデの臣僕けらい十九人にんとアサヘル缺かけてをらざりき 31 されどダビデの臣僕けらいはベニヤミンとアブネルの從者じふしや三百びやく六十人にんを擊うち殺ころせり 32 人々ひと〴〵アサヘルを取とりあげてベテレヘムにある其その父󠄃ちゝの墓はかに葬はうむるヨアブと其その從者じふしやは終󠄃夜よもすがらゆきて黎明よあけにヘブロンにいたれり

第3章

1 サウルの家いへとダビデの家いへの間あひだの戰爭いくさ久ひさしかりしがダビデは益ます〳〵强つよくなりサウルの家いへはますます弱󠄃よわくなれり

2 ヘブロンにてダビデに男子等をとこのこども生うまる其その首出はじめの子こはアムノンといひてヱズレル人びとアヒノアムより生うまる 3 其その次󠄄つぎはギレアブといひてカルメル人びとナバルの妻つまなりしアビガルより生うまる第だい三はアブサロムといひてゲシユルの王わうタルマイの女子むすめマアカの子こなり 4 第だい四はアドニヤといひてハギテの子こなり第だい五はシバテヤといひてアビタルの子こなり 5 第だい六はイテレヤムといひてダビデの妻つまエグラの子こなり是等これらの子こヘブロンにてダビデに生うまる

6 サウルの家いへとダビデの家いへの間なかに戰爭いくさありし間あひだアブネルは堅かたくサウルの家いへに荷擔つけり 7 嚮󠄇さきにサウル一人ひとりの妾めかけを有󠄃もてり其その名なをリヅパといふアヤの女むすめなり爰こゝにイシボセテ、アブネルにいひけるは汝なんぢ何なんぞわが父󠄃ちゝの妾めかけに通󠄃つうじたるや 8 アブネル甚はなはだしくイシボセテの言ことばを怒いかりていひけるは我われ今日けふ汝なんぢの父󠄃ちゝサウルの家いへとその兄弟きやうだいとその朋友ともに厚あつき意こゝろをあらはし汝なんぢをダビデの手てにわたさざるに汝なんぢ今日けふ婦󠄃人をんなの過󠄃あやまちを擧あげて我われを責せむ我われあに犬いぬの首くびならんやユダにくみする者ものならんや 9 神かみアブネルに斯かくなしまたかさねて斯かくなしたまへヱホバのダビデに誓ちかひたまひしごとく我われかれに然しかなすべし 10 即すなはち國くにをサウルの家いへより移うつしダビデの位くらゐをダンよりベエルシバにいたるまでイスラエルとユダの上うへにたてん
 568㌻ 
11 イシボセテ、アブネルを恐おそれたればかさねて一言ひとことも之これにこたふるをえざりき〘435㌻〙

12 アブネルおのれの代かはりに使󠄃者つかひをダビデにつかはしていひけるは此この地ちは誰たれの所󠄃有󠄃ものなるや又󠄂またいひけるは汝なんぢ我われと契󠄅約けいやくを爲なせ我われ力ちからを汝なんぢに添そへてイスラエルを悉こと〴〵く汝なんぢに歸きせしめん 13 ダビデいひけるは善よし我われ汝なんぢと契󠄅約けいやくをなさん但たゞし我われ一ひとつの事ことを汝なんぢに索もとむ即すなはち汝なんぢ來きたりてわが面かほを覿みる時とき先まづサウルの女むすめミカルを携つれきたらざれば我われ面かほを覿みるを得えじと 14 ダビデ使󠄃者つかひをサウルの子こイシボセテに遣󠄃つかはしていひけるはわがペリシテ人びとの陽皮まへのかは一百いつぴやくを以もて聘めとりたるわが妻つまミカルを我われに交󠄄わたすべし 15 イシボセテ人ひとをつかはしてかれを其その夫をつとライシの子こパルテより取とりしかば 16 其その夫をつと哭なきつつ步あゆみて其その後うしろにしたがひて俱ともにバホリムにいたりしがアブネルかれに歸かへり往󠄃ゆけといひければすなはち歸かへりぬ

17 アブネル、イスラエルの長老等としよりたちと語かたりていひけるは汝なんぢら前󠄃さきよりダビデを汝なんぢらの王わうとなさんことを求もとめ居ゐたり 18 されば今いまこれをなすべし其そはヱホバ、ダビデに付ついて語かたりて我われわが僕しもべダビデの手てを以もてわが民たみイスラエルをペリシテ人びとの手てよりまたその諸もろ〳〵の敵てきの手てより救すくひいださんといひたまひたればなりと 19 アブネル亦またベニヤミンの耳みゝに語かたれりしかしてアブネル自みづからイスラエルおよびベニヤミンの全󠄃家ぜんかの善よしとおもふ所󠄃ところをヘブロンにてダビデの耳みゝに吿つげんとて往󠄃ゆけり 20 すなはちアブネル二十人にんをしたがへてヘブロンにゆきてダビデの許もとにいたりければダビデ、アブネルと其そのしたがへる從者じふしやのために酒宴ふるまひを設まうけたり 21 アブネル、ダビデにいひけるは我われ起󠄃たちてゆきイスラエルをことごとくわが主しゆ王わうの所󠄃ところに集あつめて彼等かれらに汝なんぢと契󠄅約けいやくを立たてしめ汝なんぢをして心こゝろの望󠄇のぞむ所󠄃ところの者ものをことごとく治をさむるにいたらしめんと是こゝにおいてダビデ、アブネルを歸かへしてかれ安然やすらかに去されり

22 時ときにダビデの臣僕けらいおよびヨアブ人びとの國くにを侵󠄃をかして歸かへり大おほいなる掠取物ぶんどりものを携たづさへきたれり然されどアブネルはタビデとともにヘブロンにはをらざりき其そはダビデかれを歸かへしてかれ安然やすらかに去さりたればなり
 569㌻ 
23 ヨアブおよびともにありし軍兵ぐんぴやう皆みなかへりきたりしとき人々ひと〴〵ヨアブに吿つげていひけるはネルの子こアブネル王わうの所󠄃ところにきたりしが王わうかれを返󠄄かへしてかれ安然やすらかにされりと 24 ヨアブ王わうに詣いたりていひけるは汝なんぢ何なにを爲なしたるやアブネル汝なんぢの所󠄃ところにきたりしに汝なんぢ何故なにゆゑにかれを返󠄄かへして去さりゆかしめしや 25 汝なんぢネルの子こアブネルが汝なんぢを誑たぶらかさんとてきたり汝なんぢの出で入いりを知しりまた汝なんぢのすべて爲なす所󠄃ところを知しらんために來きたりしを知しると〘436㌻〙 26 かくてヨアブ、ダビデの所󠄃ところより出いで來きたり使󠄃者つかひをつかはしてアブネルを追󠄃おひしめたれば使󠄃者つかひシラの井ゐどよりかれを將ひき返󠄄かへれりされどダビデは知しらざりき

27 アブネル、ヘブロンに返󠄄かへりしかばヨアブ彼かれと密ひそかに語かたらんとてかれを門もんの內うちに引ひきゆき其處そこにてその腹はらを刺さしてこれを殺ころし己おのれの兄弟きやうだいアサヘルの血ちをむくいたり 28 其その後のちダビデ聞きゝていひけるは我われと我わが國くにはネルの子こアブネルの血ちにつきてヱホバのまへに永ながく罪つみあることなし 29 其その罪つみはヨアブの首かうべと其その父󠄃ちゝの全󠄃家ぜんかに歸きせよねがはくはヨアブの家いへには白はく濁だくを疾やむものか癩らい病びやう人にんか杖つゑに倚よるものか劍つるぎに仆たふるものか食󠄃物しよくもつに乏とぼしき者ものか絕たゆることあらざれと 30 ヨアブとその弟おとうとアビシヤイのアブネルを殺ころしたるは彼かれがギベオンにて戰陣たたかひのうちにおのれの兄弟きやうだいアサヘルをころせしによれり

31 ダビデ、ヨアブおよびおのれとともにある民たみにいひけるは汝なんぢらの衣服󠄃ころもを裂さき麻󠄃あさの衣ころもを著きてアブネルのために哀哭なげくべしとダビデ王わう其その棺くわんにしたがふ 32 人衆ひと〴〵アブネルをヘブロンに葬はうむれり王わう聲こゑをあげてアブネルの墓はかに哭なき又󠄂また民たみみな哭なけり 33 王わうアブネルの爲ために悲かなしみの歌うたを作つくりて云いはくアブネル如何いかにして愚おろかなる人ひとの如ごとくに死しにけん 34 汝なんぢの手ては縛󠄃しばりもあらず汝なんぢの足あしは鏈くさりにも繋つながれざりしものを嗚呼あゝ汝なんぢは惡人あしきひとのために仆たふる人ひとのごとくにたふれたり斯かくて民たみ皆みな再ふたゝびかれのために哭なけり
 570㌻ 
35 民たみみな日ひのあるうちにダビデにパンを食󠄃くらはしめんとて來きたりしにダビデ誓ちかひていひけるは若もし日ひの沒いるまへに我われパンにても何なににても味あじはひなば神かみ我われにかくなし又󠄂また重かさねて斯かくなしたまへと 36 民たみ皆みな見みて之これを其その目めに善よしとせり凡すべて王わうの爲なすところの事ことは皆みな民たみの目めに善よしと見みえたり 37 其その日ひ民たみすなはちイスラエル皆みなネルの子こアブネルを殺ころしたるは王わうの所󠄃爲わざにあらざるを知しれり 38 王わうその臣僕けらいにいひけるは今日けふ一人ひとりの大たい將しやう大たい人じんイスラエルに斃たふる汝なんぢらこれをしらざるや 39 我われは膏あぶらそそがれし王わうなれども今日けふ尙なほ弱󠄃よわしゼルヤの子等こどもなる此これ等らの人ひと我われには制せいしがたしヱホバ惡あくをおこなふ者ものに其その惡あくに隨したがひて報むくいたまはん

第4章

1 サウルの子こはアブネルのヘブロンにて死しにたるを聞きくきしかば其その手て弱󠄃よわくなりてイスラエルみな憂うれへたり 2 サウルの子こ隊󠄄たい長ちやう二人ふたりを有󠄃もてり其その一人ひとりをバアナといひ一人ひとりをレカブといふベニヤミンの支󠄂派󠄄わかれなるベロテ人びとリンモンの子等こどもなり其そはベロテも亦またベニヤミンの中うちに數󠄄かぞへらるればなり〘437㌻〙 3 昔さきにペロテ人びとギツタイムに逃󠄄遁󠄅のがれて今日こんにちにいたるまで彼處かしこに旅󠄃人たびゞととなりて止とゞまる

4 サウルの子こヨナタンに跛足あしなへの子こ一人ひとりありヱズレルよりサウルとヨナタンの事ことの報きこえいたりし時ときには五歳さいなりき其その乳󠄃媼うばかれを抱󠄃いだきて逃󠄄のがれたりしが急󠄃いそぎ逃󠄄にぐる時とき其その子こ墮おちて跛者あしなへとなれり其その名なをメピボセテといふ

5 ベロテ人びとリンモンの子こレカブとバアナゆきて日ひの熱あつき頃ころイシボセテの家いへにいたるにイシボセテ午睡ひるねし居ゐたり 6 かれら麥むぎを取とらんといひて家いへの中なかにいりきたりかれの腹はらを刺させりしかしてレカブと其その兄弟きやうだいバアナ逃󠄄にげさりぬ 7 彼等かれらが家いへにいりしときイシボセテは其その寢室ねやにありて床とこの上うへに寢いねたりかれら即すなはちこれをうちころしこれを馘くびきりて其その首級くびをとり終󠄃夜よもすがらアラバの道󠄃みちをゆきて 8 イシボセテの首級くびをヘブロンにダビデの許もとに携たづさへいたりて王わうにいひけるは汝なんぢの生命いのちを求もとめたる汝なんぢの敵てきサウルの子こイシボセテの首くびを視みよヱホバ今日こんにち我わが主しゆなる王わうの仇あたをサウルと其その裔すゑに報むくいたまへりと
 571㌻ 
9 ダビデ、ベロテ人びとリンモンの子こレカブと其その兄弟きやうだいバアナに答こたへていひけるはわが生命いのちを諸もろ〳〵の艱難かんんあんの中うちに救すくひたまひしヱホバは生いく 10 我われは嘗かつて人ひとの我われに吿つげて視みよサウルは死しねりと言いひて自みづから我われに善よき事ことを傳つたふる者ものと思おもひをりしを執とらへてこれをチクラグに殺ころし其その消󠄃息たよりに報むくいたり 11 况いはんや惡人あしきひとの義人ただしきひとを其その家いへの床とこの上うへに殺ころしたるをやされば我われ彼かれの血ちをながせる罪つみを汝なんぢらに報むくい汝なんぢらをこの地ちより絕たゝざるべけんやと 12 ダビデ少者わかきものに命めいじければ少者わかきものかれらを殺ころして其その手て足あしを切きり離はなしヘブロンの池いけの上うへに懸かけたり又󠄂またイシボセテの首くびを取とりてヘブロンにあるアブネルの墓はかに葬はうむれり

第5章

1 爰こゝにイスラエルの支󠄂派󠄄わかれ咸こと〴〵くヘブロンにきたりダビデにいたりていひけるは視みよ我儕われらは汝なんぢの骨こつ肉󠄁にくなり 2 前󠄃さきにサウルが我儕われらの王わうたりし時ときにも汝なんぢはイスラエルを率󠄃ひきゐて出で入いりする者ものなりきしかしてヱホバ汝なんぢに汝なんぢわが民たみイスラエルを牧養󠄄やしなはん汝なんぢイスラエルの君長きみとならんといひたまへりと 3 斯かくイスラエルの長老としより皆みなヘブロンにきたり王わうに詣いたりければダビデ王わうヘブロンにてヱホバのまへにかれらと契󠄅約けいやくをたてたり彼かれらすなはちダビデに膏あぶらを灑そそいでイスラエルの王わうとなす 4 ダビデは王わうとなりし時とき三十歳さいにして四十年ねんの間あひだ位くらゐに在ありき 5 即すなはちヘブロンにてユダを治をさむること七年ねんと六箇か月󠄃げつまたエルサレムにてイスラエルとユダを全󠄃まつたく治をさむること三十三年ねんなり〘438㌻〙

6 茲こゝに王わう其その從者じふしやとともにエルサレムに往󠄃ゆき其その地ちの居民たみヱブス人びとを攻せめんとすヱブス人びとダビデに語かたりていひけるは汝なんぢ此こゝに入いること能あたはざるべし反かへつて盲者めくら跛者あしなへ汝なんぢを追󠄃おひはらはんと是これ彼かれらダビデ此こゝに入いるあたはずと思おもへるなり
 572㌻ 
7 然しかるにダビデ、シオンの要󠄃害󠄅えうがいを取とれり是これ即すなはちダビデの城󠄃邑まちなり 8 ダビデ其その日ひいひけるは誰たれにても水すゐ道󠄃だうにいたりてヱブス人びとを擊うちまたダビデの心こゝろの惡にくめる跛者あしなへと盲者めくらを擊うつ者ものは(首かしらとなし長ちやうとなさん)と是これによりて人々ひと〴〵盲者めくらと跛者あしなへは家いへに入いるべからずといひなせり 9 ダビデ其その要󠄃害󠄅えうがいに住󠄃すみて之これをダビデの城󠄃邑まちと名なづけたりまたダビデ、ミロ(城󠄃塞とりで)より內うちの四方しはうに建󠄄築たてものをなせり 10 かくてダビデはますます大おほいに成󠄃なりゆき且かつ萬軍ばんぐんの神かみヱホバこれと共ともにいませり

11 ツロの王わうヒラム使󠄃者つかひをダビデに遣󠄃つかはして香柏かうはくおよび木匠たくみと石工せきこうをおくれり彼かれらダビデの爲ために家いへを建󠄄たつ 12 ダビデ、ヱホバのかたく己おのれをたててイスラエルの王わうとなしたまへるを曉さとりまたヱホバの其その民たみイスラエルのために其その國くにを興おこしたまひしを曉さとれり

13 ダビデ、ヘブロンより來きたりし後のちエルサレムの中うちよりまた妾めかけと妻つまを納󠄃いれたれば男子むすこ女子むすめまたダビデに生うまる 14 ヱルサレムにて彼かれに生うまれたる者ものの名なはかくのごとしシヤンマ、シヨバブ、ナタン、ソロモン 15 イブハル、エリシユア、ネペグ、ヤピア 16 エリシヤマ、エリアダ、エリバレテ

17 爰こゝに膏あぶらを沃そゝいでダビデをイスラエルの王わうと爲なせし事ことペリシテ人びとに聞きこえければペリシテ人びと皆みなダビデを獲えんとて上のぼるダビデ聞きゝて要󠄃害󠄅えうがいに下くだれり 18 ペリシテ人びと臻いたりてレバイムの谷たにに布しき備そなへたり 19 ダビデ、ヱホバに問とふていひけるは我われペリシテ人びとにむかひて上のぼるべきや汝なんぢかれらをわが手てに付わたしたまふやヱホバ、ダビデにいひたまひけるは上のぼれ我われ必かならずペリシテ人びとを汝なんぢの手てにわたさん 20 ダビデ、バアルペラジムに至いたりかれらを其所󠄃そこに擊うちていひけるはヱホバ水みづの破壞やぶり出いづるごとく我わが敵てきをわが前󠄃まへに破壞やぶりたまへりと是故このゆえに其所󠄃そのところの名なをバアルペラジム(破壞やぶれの處ところ)と呼よぶ
 573㌻ 
21 彼處かしこに彼等かれら其その偶像󠄃ぐうざうを遺󠄃すてたればダビデと其その從者じふしやこれを取とりあげたり

22 ペリシテ人びと再ふたゝび上のぼりてレバイムの谷たにに布しき備そなへたれば 23 ダビデ、ヱホバに問とふにヱホバいひたまひけるは上のぼるべからず彼等かれらの後うしろにまはりベカの樹きの方かたより彼等かれらを襲󠄂おそへ 24 汝なんぢベカの樹きの上うへに進󠄃行あゆみの音󠄃おとを聞きかばすなはち突つき出いづべし其時そのときにはヱホバ汝なんぢのまへにいでてペリシテ人びとの軍ぐんを擊うちたまふべければなりと 25 ダビデ、ヱホバのおのれに命めいじたまひしごとくなしペリシテ人びとを擊うちてゲバよりガゼルにいたる〘439㌻〙

第6章

1 ダビデ再ふたゝびイスラエルの選󠄄拔えりぬきの兵士つはもの三萬人まんにんを悉こと〴〵く集あつむ 2 ダビデ起󠄃たちておのれと共ともにをる民たみとともにバアレユダに往󠄃ゆきて神かみの櫃はこを其處そこより舁かき上のぼらんとす其その櫃はこはケルビムの上うへに坐ざしたまふ萬軍ばんぐんのヱホバの名なをもて呼よばる 3 すなはち神かみの櫃はこを新あたらしき車くるまに載のせせて山やまにあるアビナダブの家いへより舁かきだせり 4 アビナダブの子こウザとアヒオ神かみの櫃はこを載のせたる其その新あたらしき車くるまを御ぎよしアヒオは櫃はこのまへにゆけり 5 ダビデおよびイスラエルの全󠄃家ぜんか琴ことと瑟しつと鼗つづみと鈴すゞと鐃鈸ねうはちをもちて力ちからを極きはめ謠うたを歌うたひてヱホバのまへに躍󠄃踴をどれり

6 彼等かれらがナコンの禾場うちばにいたれる時ときウザ手てを神かみの櫃はこに伸のばしてこれを扶おさへたり其そは牛うし振ふりたればなり 7 ヱホバ、ウザにむかひて怒いかりを發はつし其その誤󠄄謬󠄃あやまりのために彼かれを其處そこに擊うちたまひければ彼かれそこに神かみの櫃はこの傍かたはらに死しねり 8 ヱホバ、ウザを擊うちたまひしによりてダビデ怒いかり其處そのところをペレヅウザ(ウザ擊うち)と呼よべり其その名な今日こんにちにいたる 9 其その日ひダビデ、ヱホバを畏おそれていひけるはヱホバの櫃はこいかで我所󠄃わがところにいたるべけんやと 10 ダビデ、ヱホバの櫃はこを己おのれに移うつしてダビデの城󠄃邑まちにいらしむるを好このまず之これを轉めぐらしてガテ人びとオベデエドムの家いへにいたらしむ 11 ヱホバの櫃はこガテ人びとオベデエドムの家いへに在あること三月󠄃みつきなりきヱホバ、オベデエドムと其その全󠄃家ぜんかを惠めぐみたまふ
 574㌻ 

12 ヱホバ神かみの櫃はこのためにオベデエドムの家いへと其その所󠄃有󠄃もちものを皆みな惠めぐみたまふといふ事ことダビデ王わうに聞きこえけれぼダビデゆきて喜樂よろこびをもて神かみの櫃はこをオベデエドムの家いへよりダビデの城󠄃邑まちに舁かき上のぼれり 13 ヱホバの櫃はこを舁かく者もの六步むあし行ゆきたる時ときダビデ牛うしと肥こえたる者ものを献さゝげたり 14 ダビデ力ちからを極きはめてヱホバの前󠄃まへに踴躍󠄃をどれり時ときにダビデ布ぬののエポデを著つけ居ゐたり 15 ダビデおよびイスラエルの全󠄃家ぜんか歡呼よばはりと喇叭らつぱの聲おとをもてヱホバの櫃はこを舁かきのぼれり

16 神かみの櫃はこダビデの城󠄃邑まちにいりし時ときサウルの女むすめミカル窻まどより窺うかゞひてダビデ王わうのヱホバのまへに舞まひ躍󠄃をどるを見み其心そのこころにダビデを蔑視いやしむ 17 人々ひと〴〵ヱホバの櫃はこを舁かき入いれてこれをダビデが其その爲ために張はりたる天てん幕まくの中なかなる其その所󠄃ところに置おけりしかしてダビデ燔祭はんさいと酬恩祭しうおんさいをヱホバのまへに献さゝげたり 18 ダビデ燔祭はんさいと酬恩祭しうおんさいを献さゝぐることを終󠄃をへし時とき萬軍ばんぐんのヱホバの名なを以もて民たみを祝しゆくせり 19 また民たみの中うち即すなはちイスラエルの衆庶ひと〴〵の中うちに男をとこにも女をんなにも俱ともにパン一箇ひとつ 肉󠄁にく一斤ひときれ 乾葡萄ほしぶだう一ひと塊かたまりを分󠄃わかちあたへたり斯かくて民たみ皆みなおのおの其その家いへにかへりぬ〘440㌻〙

20 爰こゝにダビデ其その家族かぞくを祝しゆくせんとて歸かへりしかばサウルの女むすめミカル、ダビデをいでむかへていひけるはイスラエルの王わう今日けふ如何いかに威󠄂光ゐくわうありしや自みづから遊󠄃蕩者いたづらものの其その身みを露あらはすがごとく今日けふ其その臣僕けらいの婢しもめ女をんなのまへに其その身みを露あらはしたまへりと 21 ダビデ、ミカルにいふ我われはヱホバのまへに即すなはち汝なんぢの父󠄃ちゝよりもまたその全󠄃家ぜんかよりも我われを選󠄄えらみて我われをヱホバの民たみイスラエルの首長きみに命めいじたまへるヱホバのまへに躍󠄃をどれり 22 我われは此これよりも尙なほ鄙かろからんまたみづから賤いやしと思おもはん汝なんぢが語いへる婢しもめ女をんな等らとともにありて我われは尊󠄅榮ほまれをえんと 23 是故このゆえにサウルの女むすめミカルは死しぬる日ひまで子こあらざりき

第7章

1 王わう其その家いへに住󠄃すむにいたり且かつヱホバ其その四方よもの敵てきを壞やぶりてかれを安やすらかならしめたまひし時とき 2 王わう預言者よげんしやナタンに云いひけるは視みよ我われは香柏かうはくの家いへに住󠄃すむ然しかれども神かみの櫃はこは幔幕まくの中うちにあり
 575㌻ 
3 ナタン王わうに云いひけるはヱホバ汝なんぢと共ともに在いませば往󠄃ゆきて凡すべて汝なんぢの心こゝろにあるところを爲なせ 4 其その夜よヱホバの言ことばナタンに臨のぞみていはく 5 往󠄃ゆきてわが僕しもべダビデに言いへヱホバ斯かく言いふ汝なんぢわがために我われの住󠄃すむべき家いへを建󠄄たてんとするや 6 我われはイスラエルの子孫ひと〴〵をエジプトより導󠄃みちびき出いだせし時ときより今日こんにちにいたるまで家いへに住󠄃すみしことなくして但たゞ天てん幕まくと幕屋まくやの中うちに步あゆみ居ゐたり 7 我われイスラエルの子孫ひと〴〵と共ともに凡すべて步あゆめる處ところにて汝なんぢら何故なにゆゑに我われに香柏かうはくの家いへを建󠄄たてざるやとわが命めいじてわが民たみイスラエルを牧養󠄄やしなはしめしイスラエルの士師さばきつかさの一人ひとりに一ひと言ことも語かたりしことあるや 8 然されば汝なんぢわが僕しもべダビデに斯かく言いふべし萬軍ばんぐんのヱホバ斯かく言いふ我われ汝なんぢを牧場まきばより取とり羊ひつじに隨したがふ所󠄃ところより取とりてわが民たみイスラエルの首長きみとなし 9 汝なんぢがすべて往󠄃ゆくところにて汝なんぢと共ともにあり汝なんぢの諸もろ〳〵の敵てきを汝なんぢの前󠄃まへより斷たちさりて地ちの上うへの大おほいなる者ものの名なのごとく汝なんぢに大おほいなる名なを得えさしめたり 10 又󠄂また我われわが民たみイスラエルのために處ところを定さだめてかれらを植うゑつけかれらをして自己おのれの處ところに住󠄃すみて重かさねて動うごくことなからしめたり 11 また惡人あくにん昔むかしのごとくまたわが民たみイスラエルの上うへに士師さばきつかさを立たてたる時ときよりの如ごとくふたゝび之これを惱なやますことなかるべし我われ汝なんぢの諸もろ〳〵の敵てきをやぶりて汝なんぢを安やすらかならしめたり又󠄂またヱホバ汝なんぢに吿つぐヱホバ汝なんぢのために家いへをたてん 12 汝なんぢの日ひの滿みちて汝なんぢが汝なんぢの父󠄃祖せんぞ等たちと共ともに寢ねむらん時ときに我われ汝なんぢの身みより出いづる汝なんぢの種子こを汝なんぢの後あとにたてて其その國くにを堅かたうせん 13 彼かれわが名なのために家いへを建󠄄たてん我われ永ながく其その國くにの位くらゐを堅かたうせん 14 我われはかれの父󠄃ちゝとなり彼かれはわが子ことなるべし彼かれもし迷󠄃まよはば我われ人ひとの杖つゑと人ひとの子この鞭むちを以もて之これを懲こらさん〘441㌻〙 15 されど我われの恩惠めぐみはわが汝なんぢのまへより除のぞきしサウルより離はなれたるごとくに彼かれよりは離はなるることあらじ 16 汝なんぢの家いへと汝なんぢの國くには汝なんぢのまへに永ながく保たもつべし汝なんぢの位くらゐは永ながく堅かたうせらるべし 17 ナタン凡すべて是等これらの言ことばのごとくまたすべてこの異象まぼろしのごとくダビデに語かたりければ
 576㌻ 

18 ダビデ王わう入いりてヱホバの前󠄃まへに坐ざしていひけるは主しゆヱホバよ我われは誰たれわが家いへは何なになればか爾なんぢ此これまで我われを導󠄃みちびきたまひしや 19 主しゆヱホバよ此これはなほ汝なんぢの目めには小ちひさき事ことなり汝なんぢまた僕しもべの家いへの遙はるか後のちの事ことを語かたりたまへり主しゆヱホバよ是これは人ひとの法おきてなり 20 ダビデ此この上うへ何なにを汝なんぢに言いふを得えん其そは主しゆヱホバ汝なんぢ僕しもべを知しりたまへばなり 21 汝なんぢの言ことばのためまた汝なんぢの心こゝろに隨したがひて汝なんぢ此この諸もろ〳〵の大おほいなることを爲なし僕しもべに之これをしらしめたまふ 22 故ゆゑに神かみヱホバよ爾なんぢは大おほいなり其そは我われらが凡すべて耳みゝに聞きける所󠄃ところに依よれば汝なんぢの如ごとき者ものなくまた汝なんぢの外ほかに神かみなければなり 23 地ちの何いづれの國くにか汝なんぢの民たみイスラエルの如ごとくなる其そは神かみゆきてかれらを贖あがなひ己おのれの民たみとなして大おほいなる名なを得えたまひまた彼かれらの爲ために大おほいなる畏おそるべき事ことを爲なしたまへばなり即すなはち汝なんぢがエジプトより贖あがなひ取とりたまひし民たみの前󠄃まへより國々くに〴〵の人ひとと其その諸もろ〳〵神かみを逐󠄃おひ拂はらひたまへり 24 汝なんぢは汝なんぢの民たみイスラエルをかぎりなく汝なんぢの民たみとして汝なんぢに定さだめたまへりヱホバよ汝なんぢはかれの神かみとなりたまふ 25 されば神かみヱホバよ汝なんぢが僕しもべと其その家いへにつきて語かたりたまひし言ことばを永ながく堅かたうして汝なんぢのいひしごとく爲なしたまへ 26 ねがはくは永久とこしなへに汝なんぢの名なを崇あがめて萬軍ばんぐんのヱホバはイスラエルの神かみなりと曰いはしめたまへねがはくは僕しもべダビデの家いへをして汝なんぢのまへに堅かたく立たゝしめたまへ 27 其そは萬軍ばんぐんのヱホバ、イスラエルの神かみよ汝なんぢ僕しもべの耳みゝに示しめして我われ汝なんぢに家いへをたてんと言いひたまひたればなり 是故このゆえに僕しもべ此この祈禱いのりを汝なんぢに爲なす道󠄃みちを心こゝろの中うちに得えたり 28 主しゆヱホバよ汝なんぢは神かみなり汝なんぢの言ことばは眞󠄃まことなり汝なんぢこの惠めぐみを僕しもべに語かたりたまへり 29 願ねがはくは僕しもべの家いへを祝福みぐみて汝なんぢのまへに永ながく續つづくことを得えさしめたまへ其そは主しゆヱホバ汝なんぢこれを語かたりたまへばなりねがはくは汝なんぢの祝福めぐみによりて僕しもべの家いへに永ながく祝福めぐみを蒙かうむらしめたまへ
 577㌻ 

第8章

1 此この後のちダビデ、ペリシテ人びとを擊うちてこれを服󠄃ふくすダビデまたペリシテ人びとの手てよりメテグアンマをとれり 2 ダビデまたモアブを擊うち彼かれらをして地ちに伏ふさしめ繩󠄂なはをもてかれらを度はかれり即すなはち二條ふたすぢの繩󠄂なはをもて死ころす者ものを度はかり一條ひとすぢの繩󠄂なはをもて生いかしおく者ものを量度はかるモアブ人びとは貢物みつぎを納󠄃いれてダビデの臣僕しもべとなれり〘442㌻〙

3 ダビデまたレホブの子こなるゾバの王わうハダデゼルがユフラテ河がはの邊󠄎ほとりにて其その勢せいを新あらたにせんとて往󠄃ゆけるを擊うてり 4 しかしてダビデ彼かれより騎兵きへい千せん七百ひやく人にん步ほ兵へい二萬人まんにんを取とりまたダビデ一いつ百ぴやくの車くるまの馬うまを存のこして其その餘ほかの車くるま馬うまは皆みな其その筋すぢを切斷きれり 5 ダマスコのスリア人びとゾバの王わうハダデゼルを援󠄃たすけんとて來きたりければダビデ、スリア人びと二萬まん二千せんを殺ころせり 6 しかしてダビデ、ダマスコのスリアに代だい官くわんを置おきぬスリア人びとは貢物みつぎを納󠄃いてダビデの臣僕しもべとなれりヱホバ、ダビデを凡すべて其その往󠄃ゆく所󠄃ところにて助たすけたまへり 7 ダビデ、ハダデゼルの臣僕けらい等どもの持もてる金きんの楯たてを奪うばひてこれをエルサレムに携もちきたる 8 ダビデ王わう又󠄂またハダデゼルの邑まちベタとベロタより甚はなはだ多おほくの銅あかがねを取とれり

9 時ときにハマテの王わうトイ、ダビデがハダデゼルの總󠄂すべての軍ぐんを擊破うちやぶりしを聞きゝて 10 トイ其その子こヨラムをダビデ王わうにつかはし安否あんぴを問とひかつ祝いはひを宣のべしむ其そはハダデゼル甞かつてトイと戰たたかひを爲なしたるにダビデ、ハダデゼルとたたかひてこれを擊うちやぶりたればなりヨラム銀ぎんの器うつはと金きんの器うつはと銅あかがねの器うつはを携たづさへ來きたりければ 11 ダビデ王わう其その攻せめ伏ふせたる諸もろ〳〵の國民くにたみの中うちより取とりて納󠄃をさめたる金銀きんぎんと共ともに是等これらをもヱホバに納󠄃をさめたり 12 即すなはちエドムよりモアブよりアンモンの子孫ひと〴〵よりペリシテ人びとよりアマレクよりえたる物ものおよびゾバの王わうレホブの子こハダデゼルより得えたる掠取物ぶんどりものとともにこれを納󠄃をさめたり

13 ダビデ鹽しほの谷たににてエドム人びと一萬まん八千せんを擊うちて歸かへりて名譽ほまれを得えたり 14 ダビデ、エドムに代だい官くわんを置おけり即すなはちエドムの全󠄃地ぜんちに徧あまねく代だい官くわんを置おきてエドム人びとは皆みなダビデの臣僕しもべとなれりヱホバ、ダビデを凡すべて其その往󠄃ゆくところにて助たすけ給たまへり
 578㌻ 

15 ダビデ、イスラエルの全󠄃地ぜんちを治をさめ其その民たみに公󠄃道󠄃おほやけと正義ただしきを行おこなふ 16 ゼルヤの子こヨアブは軍ぐんの長かしらアヒルデの子こヨシヤバテは史󠄃し官くわん 17 アヒトブの子こザドクとアビヤタルの子こアヒメレクは祭司さいしセラヤは書記しよき官くわん 18 ヱホヤダの子こベナヤはケレテ人びとおよびペレテ人びとの長かしらダビデの子等こたちは大臣だいじんなりき

第9章

1 爰こゝにダビデいひけるはサウルの家いへの遺󠄃存のこれる者もの尙なほあるや我われヨナタンの爲ために其人そのひとに恩惠めぐみをほどこさんと 2 サウルの家いへの僕しもべなるヂバと名なづくる者ものありければかれをダビデの許もとに召めしきたるに王わうかれにいひけるは汝なんぢはヂバなるか彼かれいふ僕しもべ是これなり 3 王わういひけるは尙なほサウルの家いへの者ものあるか我われ其人そのひとに神かみの恩惠めぐみをほどこさんとすヂバ王わうにいひけるはヨナタンの子こ尙なほあり跛足あしなへなり〘443㌻〙 4 王わうかれにいひけるは其人そのひとは何處いづくにをるやヂバ王わうにいひけるはロデバルにてアンミエルの子こマキルの家いへにをる 5 ダビデ王わう人ひとを遣󠄃つかはしてロデバルより即すなはちアンミエルの子こマキルの家いへよりかれを携つれ來きたらしむ 6 サウルの子こヨナタンの子こなるメピボセテ、ダビデの所󠄃ところに來きたり伏ふして拜はいせりダビデ、メピボセテよといひければ答こたへて僕しもべ此こゝにありと曰いふ 7 ダビデかれにいひけるは恐おそるるなかれ我われ必かならず汝なんぢの父󠄃ちゝヨナタンの爲ために恩惠めぐみを汝なんぢにしめさん我われ汝なんぢの父󠄃ちゝサウルの地ちを悉こと〴〵く汝なんぢに復かへすべし又󠄂また汝なんぢは恒つねに我わが席せきにおいて食󠄃くらふべしと 8 かれ拜はいして言いひけるは僕しもべ何なになればか汝なんぢ死しにたる犬いぬのごとき我われを眷顧󠄃かへりみたまふ

9 王わうサウルの僕しもべヂバを呼よびてこれにいひけるは凡すべてサウルとその家いへの物ものは我われ皆みな汝なんぢの主人しゆじんの子こにあたへたり 10 汝なんぢと汝なんぢの子等こどもと汝なんぢの僕けらいかれのために地ちを耕󠄃たがへして汝なんぢの主人しゆじんの子こに食󠄃くらふべき食󠄃物しよくもつを取とりきたるべし但たゞし汝なんぢの主人しゆじんの子こメピボセテは恒つねに我わが席せきにおいて食󠄃くらふべしとヂバは十五人にんの子こと二十人にんの僕けらいあり
 579㌻ 
11 ヂバ王わうにいひけるは總󠄂すべて王わうわが主しゆの僕しもべに命めいじたまひしごとく僕しもべなすべしとメピボセテは王わうの子この一人ひとりのごとくダビデの席せきにて食󠄃くらへり 12 メピボセテに一人ひとりの若わかき子こあり其その名なをミカといふヂバの家いへに住󠄃すめる者ものは皆みなメピボセテの僕けらいなりき 13 メピボセテはエルサレムに住󠄃すみたり其そはかれ恒つねに王わうの席せきにて食󠄃くらひたればなりかれは兩ふたつの足あしともに跛なへたる者ものなり

第10章

1 此この後のちアンモンの子孫ひと〴〵の王わう死しにて其その子こハヌン之これに代かはりて位くらゐに即つく 2 ダビデ我われナハシの子こハヌンにその父󠄃ちゝの我われに恩惠めぐみを示しめせしごとく恩惠めぐみを示しめさんといひてダビデかれを其その父󠄃ちゝの故ゆゑによりて慰なぐさめんとて其その僕けらいを遣󠄃つかはせりダビデの僕けらいアンモンの子孫ひと〴〵の地ちにいたるに 3 アンモンの子孫ひと〴〵の諸伯きみたち其その主しゆハヌンにいひけるはダビデ慰なぐさむる者ものを汝なんぢに遣󠄃つかはしたるによりて彼かれ汝なんぢの父󠄃ちゝを崇たふとむと汝なんぢの目めに見みゆるやダビデ此この城󠄃邑まちを窺うかゞひこれを探さぐりて陷おとしいれんために其その僕けらいを汝なんぢに遣󠄃つかはせるにあらずや 4 是こゝにおいてハヌン、ダビデの僕しもべを執とらへ其その鬚ひげの半󠄃なかばを剃そり落おとし其その衣服󠄃ころもを中なかより斷たちて股もゝまでにしてこれを歸かへせり 5 人々ひと〴〵これをダビデに吿つげたればダビデ人ひとを遣󠄃つかはしてかれらを迎󠄃むかへしむ其その人々ひと〴〵大おほいに恥はぢたればなり即すなはち王わういふ汝なんぢら鬚ひげの長のびるまでヱリコに止とゞまりて然しかるのち歸かへるべしと

6 アンモンの子孫ひと〴〵自己おのれのダビデに惡にくまるるを見ししかばアンモンの子孫ひと〴〵人ひとを遣󠄃つかはしてベテレホブのスリア人びととゾバのスリア人びとの步ほ兵へい二萬人まんにんおよびマアカの王わうより一いつ千せん人にんトブの人ひとより一萬まん二千せん人にんを雇󠄃やとひいれたり〘444㌻〙 7 ダビデ聞きゝてヨアブと勇󠄃士ゆうしの惣軍そうぐんを遣󠄃つかはせり 8 アンモンの子孫ひと〴〵出いでて門もんの入いり口くちに軍いくさの陣列そなへをなしたりゾバとレホブのスリア人びとおよびトブの人ひととマアカの人ひとは別べつに野のに居をり

9 ヨアブ戰たたかひの前󠄃ぜん後ごより己おのれに向むかふを見みてイスラエルの選󠄄拔えりぬきの兵つはものの中うちを選󠄄えらみてこれをスリア人びとに對むかひて備そなへしめ
 580㌻ 
10 其その餘ほかの民たみをば其その兄弟きやうだいアビシヤイの手てに交󠄄わたしてアンモンの子孫ひと〴〵に向むかひて備そなへしめて 11 いひけるは若もしスリア人びと我われに手て强ごはからば汝なんぢ我われを助たすけよ若もしアンモンの子孫ひと〴〵汝なんぢに手て剛ごはからば我われゆきて汝なんぢをたすけん 12 汝なんぢ勇󠄃いさましくなれよ我われら民たみのためとわれらの神かみの諸邑まち〳〵のために勇󠄃いさましく爲なさんねがはくはヱホバ其その目めによしと見みゆるところをなしたまへ 13 ヨアブ己おのれと共ともに在ある民たみと共ともにスリア人びとにむかひて戰たたかはんとて近󠄃ちかづきければスリア人びと彼かれのまへより逃󠄄にげたり 14 アンモンの子孫ひと〴〵スリア人びとの逃󠄄にげたるを見みて亦また自己おのれ等らもアビシヤイのまへより逃󠄄にげて城󠄃邑まちにいりぬヨアブすなはちアンモンの子孫ひと〴〵の所󠄃ところより還󠄃かへりてエルサレムにいたる

15 スリア人びと其そのイスラエルのまへに敗やぶれたるを見みて俱ともにあつまれり 16 ハダデゼル人ひとをやりて河かはの前󠄃岸むかふにをるスリア人びとを將ひきゐ出いだして皆みなヘラムにきたらしむハダデゼルの軍ぐんの長かしらシヨバクかれらを率󠄃ひきゐたり 17 其その事ことダビデに聞きこえければ彼かれイスラエルを悉こと〴〵く集あつめてヨルダンを渉わたりてヘラムに來きたれりスリア人びとダビデに向むかひて備そなへ之これと戰たゝかふ 18 スリア人びとイスラエルのまへより逃󠄄にげければダビデ、スリアの兵車いくさぐるまの人ひと七百ひやく騎兵きへい四萬まんを殺ころし又󠄂また其その軍ぐんの長かしらシヨバクを擊うちてこれを其所󠄃そこに死しなしめたり 19 ハダデゼルの臣しんなる王等わうたち其そのイスラエルのまへに壞やぶれたるを見みてイスラエルと平󠄃和やはらぎをなして之これに事つかへたり斯かくスリア人びとは恐おそれて再ふたゝびアンモンの子孫ひと〴〵を助たすくることをせざりき

第11章

1 年とし歸かへりて王等わうたちの戰たたかひに出いづる時ときにおよびてダビデ、ヨアブおよび自己おのれの臣僕けらい並ならびにイスラエルの全󠄃ぜん軍ぐんを遣󠄃つかはせり彼等かれらアンモンの子孫ひと〴〵を滅ほろぼしてラバを圍󠄃かこめりされどダビデはエルサレムに止とゞまりぬ

2 爰こゝに夕ゆふ暮ぐれにダビデ其その床とこより興おきいでて王わうの家いへの屋蓋やねのうへに步あゆみしが屋蓋やねより一人ひとりの婦󠄃人をんなの體からだをあらふを見みたり其その婦󠄃をんなは觀みるに甚はなはだ美うつくし 3 ダビデ人ひとを遣󠄃つかはして婦󠄃人をんなを探さぐらしめしに或ある人ひといふ此これはエリアムの女むすめハテシバにてヘテ人びとウリヤの妻つまなるにあらずやと〘445㌻〙
 581㌻ 
4 ダビデ乃すなはち使󠄃者つかひを遣󠄃つかはして其その婦󠄃をんなを取とる婦󠄃をんな彼かれに來きたりて彼かれ婦󠄃をんなと寢いねたりしかして婦󠄃をんな其その不潔󠄄けがれを淸きよめて家いへに歸かへりぬ 5 かくて婦󠄃をんな孕はらみければ人ひとをつかはしてダビデに吿つげていひけるは我わが子こを孕はらめりと

6 是こゝにおいてダビデ人ひとをヨアブにつかはしてヘテ人びとウリヤを我われに遣󠄃つかはせといひければヨアブ、ウリヤをダビデに遣󠄃つかはせり 7 ウリヤ、ダビデにいたりしかばダビデこれにヨアブの如何いかなると民たみの如何いかなると戰爭たたかひの如何いかなるを問とふ 8 しかしてダビデ、ウリヤにいひけるは汝なんぢの家いへに下くだりて足あしを洗あらへとウリヤ王わうの家いへを出いづるに王わうの贈物おくりもの其その後うしろに從したがひてきたる 9 然されどウリヤは王わうの家いへの門もんに其その主しゆの僕しもべ等らとともに寢いねておのれの家いへにくだりいたらず 10 人々ひと〴〵ダビデに吿つげてウリヤ其その家いへにくだり至いたらずといひければダビデ、ウリヤにいひけるは汝なんぢは旅󠄃たび路ぢをなして來きたれるにあらずや何故なにゆゑに自己おのれの家いへにくだらざるや 11 ウリヤ、ダビデにいひけるは櫃はことイスラエルとユダは小屋こやの中うちに住󠄃とゞまりわが主しゆヨアブとわが主しゆの僕けらいは野のの表おもてに陣ぢんを取とるに我われいかでわが家いへにゆきて食󠄃くらひ飮のみしまた妻つまと寢いねべけけんや汝なんぢは生いくまた汝なんぢの靈魂たましひは活いく我われ此事このことをなさじ 12 ダビデ、ウリヤにいふ今日けふも此こゝにとゞまれ明日あす我われ汝なんぢを去さらしめんとウリヤ其その日ひと次󠄄つぎの日ひエルサレムにとゞまりしが 13 ダビデかれを召めして其そのまへに食󠄃くひ飮のみせしめダビデかれを醉ゑはしめたり晩よひにいたりて彼かれ出いでて其その床とこに其その主しゆの僕しもべと共ともに寢いねたりされどおのれの家いへにはくだりゆかざりき

14 朝󠄃あさにおよびてダビデ、ヨアブヘの書ふみを認󠄃したためて之これをウリヤの手てによりて遣󠄃おくれり 15 ダビデ其その書ふみに書しるしていはく汝なんぢらウリヤを烈はげしき戰たたかひの先鉾さきにいだしてかれの後うしろより退󠄃しりぞきて彼かれをして戰死うちじにせしめよ 16 是こゝにおいてヨアブ城󠄃邑まちを窺うかゞひてウリヤをば其その勇󠄃士ゆうしの居をると知しる所󠄃ところに置おけり 17 城󠄃邑まちの人ひと出いでてヨアブと戰たゝかひしかばダビデの僕けらいの中うちの數󠄄人すうにん仆たふれヘテ人びとウリヤも死しり 18 ヨアブ人ひとをつかはして軍いくさの事ことを悉こと〴〵くダビデに吿つげしむ 19 ヨアブ其その使󠄃者つかひに命めいじていひけるは汝なんぢが軍いくさの事ことを皆みな王わうに語かたり終󠄃をへしとき
 582㌻ 
20 王わうもし怒いかりを發おこして汝なんぢに汝なんぢらなんぞ戰たゝかはんとて城󠄃邑まちに近󠄃ちかづきしや汝なんぢらは彼かれらが石墻いしがきの上うへより射󠄂いることを知しらざりしや 21 ヱルベセテの子こアビメレクを擊うちし者ものは誰たれなるや一人ひとりの婦󠄃をんなが石垣いしがきの上うへより磨󠄃うすの上うは石いしを投なげて彼かれをテベツに殺ころせしにあらずや何なんぞ汝なんぢら城󠄃垣いじがきに近󠄃ちかづきしやと言いはば汝なんぢ言いふべし汝なんぢの僕けらいヘテ人びとウリヤもまた死しねりと〘446㌻〙

22 使󠄃者つかひゆきてダビデにいたりヨアブが遣󠄃つかはしたるところのことをことごとく吿つげたり 23 使󠄃者つかひダビデにいひけるは敵てき我儕われらに手て强ごはかりしが城󠄃外そとにいでて我儕われらにいたりしかば我儕われらこれに迫󠄃せまりて門もんの入いり口くちにまでいたれり 24 時ときに射󠄂手いての者もの城󠄃垣いしがきの上うへより汝なんぢの僕けらいを射󠄂いたりければ王わうの僕けらいの或ある者もの死しに亦また汝なんぢの僕けらいヘテ人びとウリヤも死しねりと 25 ダビデ使󠄃者つかひにいひけるは斯かく汝なんぢヨアブに言いふべし此事このことを憂うれふるなかれ刀劍かたなは此これをも彼かれをも同おなじく殺ころすなり强つよく城󠄃邑まちを攻せめて戰たゝかひ之これを陷おとしいるべしと汝なんぢかくヨアブを勵はげますべし

26 ウリヤの妻つま其その夫をつとウリヤの死しにたるを聞きゝて夫をつとのために悲哀かなしめり 27 其その喪もの過󠄃すぎし時ときダビデ人ひとを遣󠄃つかはしてかれをおのれの家いへに召めしいる彼かれすなはちその妻つまとなりて男子をとこのこを生うめり但たゞしダビデの爲なしたる此事このことはヱホバの目めに惡あしかりき

第12章

1 ヱホバ、ナタンをダビデに遣󠄃つかはしたまへば彼かれダビデに至いたりてこれにいひけるは一ひとつの邑まちに二箇ふたりの人ひとあり一ひとりは富とみて一ひとりは貧󠄃まづし 2 其その富者とめるものは甚はなはだ多おほくの羊ひつじと牛うしを有󠄃もてり 3 されど貧󠄃者まづしきものは唯たゞ自己おのれの買かひて育そだてたる一ひとつの小ちひさき牝め羔ひつじの外ほかは何なにをも有󠄃もたざりき其その牝め羔ひつじ彼かれおよびかれの子女こどもとともに生長そだちかれの食󠄃物くひものを食󠄃くらひかれの椀わんに飮のみまた彼かれの懷ふところに寢いねて彼かれには女子むすめのごとくなりき 4 時ときに一人ひとりの旅󠄃人たびゞと其その富とめる人ひとの許もとに來きたりけるが彼かれおのれの羊ひつじと牛うしの中うちを取とりてそのおのれに來きたれる旅󠄃人たびゞとのために烹にるを惜をしみてかの貧󠄃まづしき人ひとの牝め羔ひつじを取とりて之これをおのれに來きたれる人ひとのために烹にたり 5 ダビデ其人そのひとの事ことを大おほいに怒いかりてナタンにいひけるはヱホバは生いく誠󠄃まことに此これをなしたる人ひとは死しぬべきなり
 583㌻ 
6 且かつ彼かれ此事このことをなしたるに因よりまた憐憫あはれまざりしによりて其その牝め羔ひつじを四し倍ばいになして償つくなふべし

7 ナタン、ダビデにいひけるは汝なんぢは其人そのひとなりイスラエルの神かみヱホバ斯かくいひたまふ我われ汝なんぢに膏あぶらを沃そゝいでイスラエルの王わうとなし我われ汝なんぢをサウルの手てより救すくひいだし 8 汝なんぢに汝なんぢの主人しゆじんの家いへをあたへ汝なんぢの主人しゆじんの諸妻つまたちを汝なんぢの懷ふところに與あたへまたイスラエルとユダの家いへを汝なんぢに與あたへたり若もし少すくなからば我われ汝なんぢに種々いろ〳〵の物ものを增ましくはへしならん 9 何なんぞ汝なんぢヱホバの言ことばを藐視かろんじて其その目めのまへに惡あくをなせしや汝なんぢ刃󠄃劍かたなをもてヘテ人びとウリヤを殺ころし其その妻つまをとりて汝なんぢの妻つまとなせり即すなはちアンモンの子孫ひと〴〵の劍かたなをもて彼かれを斬きり殺ころせり 10 汝なんぢ我われを輕かろんじてヘテ人びとウリヤの妻つまをとり汝なんぢの妻つまとなしたるに因よりて劍かたな何時いつまでも汝なんぢの家いへを離はなるることなかるべし 11 ヱホバ斯かくいひたまふ視みよ我われ汝なんぢの家いへの中うちより汝なんぢの上うへに禍わざはひを起󠄃おこすべし我われ汝なんぢの諸妻つまらを汝なんぢの目めのまへに取とりて汝なんぢの隣人となりに與あたへん其人そのひと此この日ひのまへにて汝なんぢの諸妻つまらとともに寢いねん〘447㌻〙 12 其そは汝なんぢは密ひそかに事ことをなしたれど我われはイスラエルの衆ひと〴〵のまへと日ひのまへに此事このことをなすべければなりと 13 ダビデ、ナタンにいふ我われヱホバに罪つみを犯をかしたりナタン、ダビデにいひけるはヱホバまた汝なんぢの罪つみを除のぞきたまへり汝なんぢ死しなざるべし 14 されど汝なんぢ此この所󠄃行わざによりてヱホバの敵てきに大おほいなる罵のゝしる機會をりを與あたへたれば汝なんぢに生うまれし其その子こ必かならず死しぬべしと 15 かくてナタン其その家いへにかへれり   爰こゝにヱホバ、ウリヤの妻つまがダビデに生うめる子こを擊うちたまひければ痛いたく疾やめり

16 ダビデ其その子このために神かみに乞こひ求もとむ即すなはちダビデ斷食󠄃だんじきして入いり終󠄃夜よもすがら地ちに臥ふしたり 17 ダビデの家いへの年とし寄より等たち彼かれの傍かたはらに立たちてかれを地ちより起󠄃たゝしめんとせしかども彼かれ肯がへんぜず又󠄂またかれらとともに食󠄃しよくを爲なさざりき 18 第七日なぬかめに其その子こ死しねりダビデの僕しもべ其その子この死しにたることをダビデに吿つぐることを恐おそれたりかれらいひけるは子この尙なほ生いける間あひだに我儕われら彼かれに語いひたりしに彼かれ我儕われらの言ことばを聽きゝいれざりき如何いかんぞ彼かれに其その子この死しにたるを吿つぐべけんや彼かれ害󠄅がいを爲なさんと
 584㌻ 
19 然しかるにダビデ其その僕しもべの私語ささやくを見みてダビデ其その子この死しにたるを曉さとれりダビデ乃すなはち其その僕しもべに子こは死しにたるやといひければかれら死しねりといふ 20 是こゝにおいてダビデ地ちよりおきあがり身みを洗あらひ膏あぶらをぬり其その衣服󠄃ころもを更󠄃かへてヱホバの家いへにいりて拜はいし自己おのれの家いへに至いたり求もとめておのれのために食󠄃しよくを備そなへしめて食󠄃くらへり 21 僕しもべ等ら彼かれにいひけるは此この汝なんぢがなせる所󠄃ところは何事なにごとなるや汝なんぢ子この生いけるあひだはこれがために斷食󠄃だんじきして哭なきながら子この死しねる時ときに汝なんぢは起󠄃おきて食󠄃しよくを爲なすと 22 ダビデいひけるは嬰孩この尙なほ生いけるあひだにわが斷食󠄃だんじきして哭なきたるは我われ誰たれかヱホバの我われを憐あはれれみて此この子こを生いかしめたまふを知しらんと思おもひたればなり 23 されど今いま死しにたれば我われなんぞ斷食󠄃だんじきすべけんや我われ再ふたゝびかれをかへらしむるを得えんや我われかれの所󠄃ところに往󠄃ゆくべけれど彼かれは我われの所󠄃ところにかへらざるべし

24 ダビデ其その妻つまバテシバを慰なぐさめかれの所󠄃ところにいりてかれとともに寢いねたりければ彼かれ男子をとこのこを生うめりダビデ其その名なをソロモンと呼よぶヱホバこれを愛あいしたまひて 25 預言者よげんしやナタンを遣󠄃つかはし其その名なをヱホバの故ゆゑによりてヱデデア(ヱホバの愛あいする者もの)と名なづけしめたまふ

26 爰こゝにヨアブ、アンモンの子孫ひと〴〵のラバを攻せめて王城󠄃みやこを取とれり 27 ヨアブ使󠄃者つかひをダビデにつかはしていひけるは我われラバを攻せめて水みづ城󠄃まちを取とれり 28 されば汝なんぢ今いま餘のこりの民たみを集あつめ斯この城󠄃まちに向むかひて陣ぢんどりて之これを取とれ恐おそらくは我われ此この城󠄃まちを取とりて人ひと我わが名なをもて之これを呼よぶにいたらんと〘448㌻〙 29 是こゝにおいてダビデ民たみを悉こと〴〵くあつめてラバにゆき攻せめて之これを取とれり 30 しかしてダビデ、アンモン王わうの冕󠄅かんむりを其その首かうべより取とりはなしたり其その金きんの重おもさは一いちタラントなりまた寳はう石せきを嵌いれたりこれをダビデの首かうべに置おくダビデ其その邑まちの掠取物ぶんどりものを甚はなはだ多おほく持もち出いだせり 31 かくてダビデ其その中うちの民たみを將ひきいだしてこれを鋸のこぎりと鐵てつの千齒せんばと鐵てつの斧をのにて斬きりまた瓦陶かはらやきがまの中なかを通󠄃行とほらしめたり彼かれ斯かくのごとくアンモンの子孫ひと〴〵の凡すべての城󠄃邑まちになせりしかしてタビデと民たみは皆みなエルサレムに還󠄃かへりぬ
 585㌻ 

第13章

1 此この後のちダビデの子こアブサロムにタマルと名なづくる美うつくしき妹いもうとありしがダビデの子こアムノンこれを戀こひたり 2 アムノン心こゝろを苦くるしめて遂󠄅つひに其その姉妹しまいタマルのためにわづらへり其そはタマルは處女をとめなりければアムノンかれに何事なにごとをも爲なしがたしと思おもひたればなり 3 然しかるにアムノンに一人ひとりの朋友ともありダビデの兄弟きやうだいシメアの子こにして其その名なをヨナダブといふヨナダブに甚はなはだ有󠄃智かしこき人ひとなり 4 彼かれアムノンにいひけるは汝なんぢ王わうの子こなんぞ日ひに日ひに斯かく痩やせゆくや汝なんぢ我われに吿つげざるやアムノン彼かれにいひけるは我われわが兄弟きやうだいアブサロムの妹いもうとタマルを戀こふ 5 ヨナダブかれにいひけるは床とこに臥ふして病やまひと佯いつはり汝なんぢの父󠄃ちゝの來きたりて汝なんぢを見みる時ときこれにいへ請󠄃こふわが妹いもうとタマルをして來きたりて我われに食󠄃しよくを予あたへしめわが見みて彼かれの手てより食󠄃くらふことをうる樣やうにわが目めのまへにて食󠄃物しよくもつを調󠄃理ととのへしめよと 6 アムノンすなはち臥ふして病やまひと佯いつはりしが王わうの來きたりておのれを見みる時ときアムノン王わうにいひけるは請󠄃こふ吾わが妹いもうとタマルをして來きたりてわが目めのまへにて二ふたつの菓くわ子しを作こしらへしめて我われにかれの手てより食󠄃くらふことを得えさしめよと

7 是こゝにおいてダビデ、タマルの家いへにいひつかはしけるは汝なんぢの兄あにアムノンの家いへにゆきてかれのために食󠄃物しよくもつを調󠄃理ととのへよと 8 タマル其その兄あにアムノンの家いへにいたるにアムノンは臥ふし居ゐたりタマル乃すなはち粉󠄃こなをとりて之これを摶こねてかれの目めのまへにて菓子くわしを作こしらへ其その菓子くわしを燒やき 9 鍋なべを取とりて彼かれのまへに傾出あけたりしかれども彼かれ食󠄃くらふことを否いなめりしかしてアムノンいひけるは汝なんぢら皆みな我われを離はなれていでよと皆みなかれをはなれていでたり 10 アムノン、タマルにいひけるは食󠄃物しよくもつを寢室ねやに持もちきたれ我われ汝なんぢの手てより食󠄃くらはんとタマル乃すなはち己おのれの作つくりたる菓子くわしを取とりて寢室ねやに持もちゆきて其その兄あにアムノンにいたる 11 タマル彼かれに食󠄃くらはしめんとて近󠄃ちかく持もちいたれる時とき彼かれタマルを執とらへて之これにいひけるは妹いもうとよ來きたりて我われと寢いねよ〘449㌻〙
 586㌻ 
12 タマルかれにいひける否いな兄あに上うへよ我われを辱はづかしむるなかれ是かくのごとき事ことはイスラエルに行おこなはれず汝なんぢ此この愚おろかなる事ことをなすべからず 13 我われは何處いづくにわが恥辱はぢを棄すてんか汝なんぢはイスラエルの愚ぐ人じんの一人ひとりとなるべしされば請󠄃こふ王わうに語かたれ彼かれ我われを汝なんぢに予あたへざることなかるべしと 14 然しかれどもアムノン其その言ことばを聽きかずしてタマルよりも力ちからありければタマルを辱はづかしめてこれと偕ともに寢いねたりしが

15 遂󠄅つひにアムノン甚はなはだ深ふかくタマルを惡にくむにいたる其そのかれを惡にくむ所󠄃ところの惡にくみはかれを戀こひたるところの戀こひよりも大おほいなり即すなはちアムノンかれにいひけるは起󠄃たちて往󠄃ゆけよ 16 かれアムノンにいひけるは我われを返󠄄かへして此この惡あくを作つくるなかれ是こは汝なんぢがさきに我われになしたる所󠄃ところの惡あくよりも大おほいなりとしかれども聽きゝいれず 17 其その側そばに仕つかふる少者わかものを呼よびていひけるは汝なんぢ此この女をんなをわが許もとより遣󠄃おくりいだして其その後あとに戶とを楗とざせと 18 タマル振ふり袖そでを着きゐたり王わうの女等ひめたちの處女をとめなるものは斯かくのごとき衣服󠄃ころもをもて粧よそほひたりアムノンの侍者そばづかへかれを外そとにいだして其その後あとに戶とを楗とざせり 19 タマル灰󠄃はひを其その首かうべに蒙かむり着きたる振ふり袖そでを裂さき手てを首かうべにのせて呼よばはりつつ去さりゆけり

20 其その兄あにアブサロムかれにいひけるは汝なんぢの兄あにアムノン汝なんぢと偕ともに在ありしや然されど妹いもうとよ默もくせよ彼かれは汝なんぢの兄あになり此事このことを心こゝろに留とむるなかれとかくてタマルは其その兄あにアブサロムの家いへに凄さみしく住󠄃すみ居をれり 21 ダビデ王わう是等これらの事ことを悉こと〴〵く聞きゝて甚はなはだ怒いかれり 22 アブサロムはアムノンにむかひて善よきも惡あしきも語いはざりき其そはアブサロム、アムノンを惡にくみたればたり是こはかれがおのれの妹いもうとタマルを辱はづかしめたるに由よれり

23 全󠄃まる二年ねんの後のちアブサロム、エフライムの邊󠄎ほとりなるバアルハゾルにて羊ひつじの毛けを剪きらしめ居ゐて王わうの諸子こたちを悉こと〴〵く招まねけり 24 アブサロム王わうの所󠄃もとにいりていひけるは視みよ僕しもべ羊ひつじの毛けを剪きらしめをるねがはくは王わうと王わうの僕しもべ等たち僕しもべとともに來きたりたまへ
 587㌻ 
25 王わうアブサロムに云いひけるは否いなわが子こよ我儕われらを皆みないたらしむるなかれおそらくは汝なんぢの費つひえを多おほくせんアブサロム、ダビデを强しふしかれどもダビデ往󠄃ゆくことを肯がへんぜずして彼かれを祝しゆくせり 26 アブサロムいひけるは若もししからずば請󠄃こふわが兄あにアムノンをして我われらとともに來きたらしめよ王わうかれにいひけるは彼かれなんぞ汝なんぢとともにゆくべけんやと 27 されどアブサロムかれを强しひければアムノンと王わうの諸子こたちを皆みなアブサロムとともにゆかしめたり 28 爰こゝにアブサロム其その少者わかもの等らに命めいじていひけるは請󠄃こふ汝なんぢらアムノンの心こゝろの酒さけによりて樂たのしむ時ときを視みすましてわが汝等なんぢらにアムノンを擊うてと言いふ時ときに彼かれを殺ころせ懼おそるるなかれ汝等なんぢらに之これを命めいじたるは我われにあらずや汝なんぢら勇󠄃いさましく武たけくなれと〘450㌻〙 29 アブサロムの少者わかもの等らアブサロムの命めいぜしごとくアムノンになしければ王わうの諸子こたち皆みな起󠄃たちて各おの〳〵其その騾馬うまに乘のりて逃󠄄にげたり

30 彼等かれらが路みちにある時とき風ふう聞ぶんダビデにいたりていはくアブサロム王わうの諸子こたちを悉こと〴〵く殺ころして一人ひとりも遺󠄃のこるものなしと 31 王わう乃すなはち起󠄃たち其その衣ころもを裂さきて地ちに臥ふす其その臣僕しもべ皆みな衣ころもを裂さて其その傍そばにたてり 32 ダビデの兄弟きやうだいシメアの子こヨナダブ答こたへていひけるは吾わが主しゆよ王わうの御子みこ等たちなる少年せうねんを皆みな殺ころしたりと思おもひたまふなかれアムノン獨ひとり死しねるのみ彼かれがアブサロムの妹いもうとタマルを辱はづかしめたる日ひよりアブサロム此事このことをさだめおきたるなり 33 されば吾わが主しゆ王わうよ王わうの御子みこ等たち皆みな死しねりといひて此事このことをおもひ煩わづらひたまふなかれアムノン獨ひとり死しにたるなればなりと

34 斯かくてアブサロムは逃󠄄のがれたり爰こゝに守望󠄇うかがひゐたる少者わかもの目めをあげて視みたるに視みよ山やまの傍わきよりして己おのれの後うしろの道󠄃みちより多おほくの人ひと來きたれり 35 ヨナダブ王わうにいひけるは視みよ王わうの御子みこ等たち來きたる僕しもべのいへるがごとくしかりと 36 彼かれ語かたることを終󠄃をへし時とき視みよ王わうの子等こたち來きたり聲こゑをあげて哭なけり王わうと其その僕しもべ等らも皆みな大おほいに甚いたく哭なけり

37 偖さてアブサロムは逃󠄄にげてゲシユルの王わうアミホデの子こタルマイにいたるダビデは日々ひび其その子このために悲かなしめり 38 アブサロム逃󠄄にげてゲシユルにゆき三年ねん彼處かしこに居ゐたり
 588㌻ 
39 ダビデ王わうアブサロムに逢あはんと思おもひ煩わづらふ其そはアムノンは死しにたるによりてダビデかれの事ことはあきらめたればなり

第14章

1 ゼルヤの子こヨアブ王わうの心こゝろのアブサロムに趣おもむくを知しれり 2 ヨアブ乃すなはちテコアに人ひとを遣󠄃やりて彼處かしこより一人ひとりの哲かしこき婦󠄃をんなを呼よびきたらしめて其その婦󠄃をんなにいひけるは請󠄃こふ汝なんぢ喪もにある眞󠄃似まねして喪もの服󠄃ころもを着き油あぶらを身みにぬらず死しにたる者もののために久ひさしく哀かなしめる婦󠄃をんなのごとく爲なりて 3 王わうの所󠄃ところにいたり是かくのごとくかれに語かたるべしとヨアブ其その語言ことばをかれの口くちに授さづけたり

4 テコアの婦󠄃をんな王わうにいたり地ちに伏ふして拜はいし王わうにいひけるは王わうよ助たすけたまへ 5 王わう婦󠄃をんなにひけるは何事なにごとなるや婦󠄃をんないひけるは我われは實まことに嫠やもめ婦󠄃をんなにしてわが夫をつとは死しねり 6 仕女つかへめに二人ふたりの子こあり俱ともに野のに爭あらそひしが誰たれもかれらを排ひき解わくるものなきにより此これ遂󠄅つひに彼かれを擊うちて殺ころせり 7 是こゝにおいて視みよ全󠄃家ぜんか仕女つかへめに逼󠄃せまりていふ其その兄弟きやうだいを擊うち殺ころしたる者ものを付わたせ我われらかれをその殺ころしたる兄弟きやうだいの生命いのちのために殺ころさんと斯かく嗣子よつぎをも滅ほろぼし存のこれるわが炭󠄃火ひを熄けしてわが夫をつとの名なをも遺󠄃存あとをも地ちの面おもてに無なからしめんとす〘451㌻〙

8 王わう婦󠄃をんなにいひけるは汝なんぢの家いへに往󠄃ゆけ我われ汝なんぢの事ことにつきて命令めいれいを下くださん 9 テコアの婦󠄃をんな王わうにいひけるは王わうわが主しゆよねがはくは其その罪つみは我われとわが父󠄃ちゝの家いへに歸かへして王わうと王わうの位くらゐには罪つみあらざれ 10 王わういひけるは誰たれにても爾なんぢに語かたる者ものをば我われに將ひき來きたれしかせば彼かれかさねて爾なんぢに觸ふるること无なかるべし 11 婦󠄃をんないひけるは願ねがはくは王わう爾なんぢの神かみヱホバを憶おぼえてかの仇あたを報むくゆる者ものをして重かさねて滅ほろぼすことを爲なさしめず我わが子こを斷たつことなからしめたまへと王わういひけるはヱホバは生いく爾なんぢの子この髮毛け一ひとすぢも地ちに隕おつることなかるべし
 589㌻ 

12 婦󠄃をんないひけるは請󠄃こふ仕女つかへめをして一ひと言ことわが主しゆ王わうに言いはしめたまヘダビデいひけるは言いふべし 13 婦󠄃をんないひけるは爾なんぢなんぞ斯かゝる事ことを神かみの民たみにむかひて思おもひたるや王わう此この言ことばを言いふにより王わうは罪つみある者もののごとし其そは王わうその放はなたれたる者ものを歸かへらしめざればなり 14 抑そも〳〵我儕われらは死しなざるべからず我儕われらは地ちに潟こぼれたる水みづの再ふたゝび聚あつまる能あたはざるがごとし神かみは生命いのちを取とりたまはず方法てだてを設まうけて其その放はなたれたる者ものをして己おのれの所󠄃ところより放はなたれをることなからしむ 15 我わが此事このことを王わう我わが主しゆに言いはんとて來きたれるは民たみ我われを恐おそれしめたればなり故ゆゑに仕女つかへめ謂おもへらく王わうに言いはん王わう婢しもめの言ことばを行おこなひたまふならんと 16 其そは王わう聞きゝて我われとわが子こを共ともに滅ほろぼして神かみの產業さんげふに離はなれしめんとする人ひとの手てより婢しもめを救すくひいだしたまふべければなり 17 仕女つかへめまた思おもへり王わうわが主しゆの言いは慰なぐさめとなるべしと其そは神かみの使󠄃つかひのごとく王わうわが主しゆは善ぜんも惡あくも聽きゝたまへばなりねがはくは爾なんぢの神かみヱホバ爾なんぢと共ともに在いませと

18 王わうこたへて婦󠄃をんなにいひけるは請󠄃こふわが爾なんぢに問とはんところの事ことを我われに隱かくすなかれ婦󠄃をんないふ請󠄃こふ王わうわが主しゆ言いひたまへ 19 王わういひけるは比このすべての事ことにおいてはヨアブの手て爾なんぢとともにあるや婦󠄃をんな答こたへていひけるは爾なんぢの靈魂たましひは活いく王わうわが主しゆよ凡すべて王わうわが主しゆの言いひたまひしところは右みぎにも左ひだりにもまがらず皆みなに爾なんぢの僕しもべヨアブ我われに命めいじ是等これらの言ことばを悉こと〴〵く仕女つかへめの口くちに授さづけたり 20 其その事ことの見みゆるとこるを變かへんとて爾なんぢの僕しもべヨアブ此事このことをなしたるなり然されどわが主しゆは神かみの使󠄃つかひの智慧󠄄ちゑのごとく智慧󠄄ちゑありて地ちにある事ことを悉こと〴〵く知しりたまふと

21 是こゝにおいて王わうヨアブにいひけるは視みよ我われ此事このことを爲なすされば往󠄃ゆきて少年せうねんアブサロムを携つれ歸かへるべし 22 ヨアブ地ちに伏ふし拜はいし王わうを祝しゆくせりしかしてヨアブいひけるは王わうわが主しゆよ王わう僕しもべの言ことばを行おこなひたまへば今日けふ僕しもべわが爾なんぢに惠めぐまるるを知しると〘452㌻〙 23 ヨアブ乃すなはち起󠄃たちてゲシユルに往󠄃ゆきアブサロムをエルサレムに携つれきたれり 24 王わういひけるは彼かれは其その家いへに退󠄃しりぞくべしわが面かほを見みるべからずと故ゆゑにアブサロム己おのれの家いへに退󠄃しりぞきて王わうの面かほを觀みざりき
 590㌻ 

25 偖さてイスラエルの中うちにアブサロムのごとく其その美貌うつくしきのために讃ほめられたる人ひとはなかりき其その足あしの跖うらより頭あたまの頂いたゞきにいたるまで彼かれには瑕疵きずあることなし 26 アブサロム其その頭あたまを剪かる時とき其その頭あたまの髮かみを衡はかるに王わうの權衡はかりの二百ひやくシケルあり每まい年ねんの終󠄃をはりにアブサロム其その頭あたまを剪かり是これは己おのれの重おもさによりて剪かりたるなり 27 アブサロムに三人にんの男子むすこと一人ひとりのタマルといふ女子むすめ生うまれたりタマルは美かほよき女をんななり

28 アブサロム二年ねんのあひだエルサレムにをりたれども王わうの顏かほを見みざりき 29 是これによりてアブサロム王わうに遣󠄃つかはさんとてヨアブを呼よびに遣󠄃つかはしけるが彼かれ來きたることを肯がへんぜず再ふたゝび遣󠄃つかはせしかども來きたることを肯がへんぜざりき 30 アブサロム其その僕しもべにいひけるは視みよヨアブの田地はたけは我われの近󠄃ちかくにありて其處そこに大おほ麥むぎあり往󠄃ゆきて其それに火ひを放はなてとアブサロムの僕しもべ等ら田地はたけに火ひを放はなてり 31 ヨアブ起󠄃たちてアブサロムの家いへに來きたりてこれにいひけるは何故なにゆゑに爾なんぢの僕しもべ等ら田地はたけに火ひを放はなちたるや 32 アブサロム、ヨアブにいひけるは我われ人ひとを爾なんぢに遣󠄃つかはして此こゝに來きたれ我われ爾なんぢを王わうにつかはさんと言いへり即すなはち爾なんぢをして王わうに我われ何なんのためにゲシユルよりきたりしや彼處かしこに尙なほあらば我わがためには反かへつて善よしと言いはしめんとせり然されば我われ今いま王わうの面かほを見みん若もし我われに罪つみあらば王わう我われを殺ころすべし 33 ヨアブ王わうにいたりてこれに吿つげたれば王わうアブサロムを召めす彼かれ王わうにいたりて王わうのまへに地ちに伏ふして拜はいせり王わうアブサロムに接吻くちつけす

第15章

1 此この後のちアブサロム己おのれのために戰車いくさぐるまと馬うまならびに己おのれのまへに驅かける者もの五十人にんを備そなへたり 2 アブサロム夙はやく興おきて門もんの途󠄃みちの傍かたはらにたち人ひとの訴訟󠄃うつたへありて王わうに裁判󠄄さばきを求もとめんとて來きたる時ときはアブサロム其人そのひとを呼よびていふ爾なんぢは何いづれの邑まちの者ものなるやと其人そのひと僕しもべはイスラエルの某それの支󠄂派󠄄わかれの者ものなりといへば 3 アブサロム其人そのひとにいふ見みよ爾なんぢの事ことは善よくまた正たゞし然されど爾なんぢに聽きくべき人ひとは王わういまだ立たてずと 4 アブサロム又󠄂また嗚呼あゝ我われを此この地ちの士師さばきびととなす者ものもがな然さすれば凡すべて訴訟󠄃うつたへと公󠄃事くじある者ものは我われに來きたりて我われ之これに公󠄃義こうぎを爲なしあたへんといふ
 591㌻ 
5 また人ひと彼かれを拜はいせんとて近󠄃ちかづく時ときは彼かれ手てをのばして其人そのひとを扶たすけ之これに接吻くちつけす 6 アブサロム凡すべて王わうに裁判󠄄さばきを求もとめんとて來きたるイスラエル人びとに是かくのごとくなせり斯かくアブサロムはイスラエルの人々ひと〴〵の心こゝろを取とれり〘453㌻〙

7 斯かくて四よ年ねんの後のちアブサロム王わうにいひけるは請󠄃こふ我われをして往󠄃ゆきてヘブロンにてヱホバに我われ甞かつて立たてし願ぐわんを果はたさしめよ 8 其そは僕しもべスリアのゲシユルに居をりし時とき願ぐわんを立たてて若もしヱホバ誠󠄃まことに我われをエルサレムに携つれ歸かへりたまはば我われヱホバに事つかへんと言いひたればなりと 9 王わうかれにいひけるは安然やすらかに往󠄃ゆけと彼かれすなはち起󠄃たちてヘブロンに往󠄃ゆけり 10 しかしてアブサロム窺うかゞふ者ものをイスラエルの支󠄂派󠄄わかれの中うちに徧あまねく遣󠄃つかはして言いはせけるは爾等なんぢら喇叭らつぱの音󠄃おとを聞きかばアブサロム、ヘブロンにて王わうとなれりと思おもふべしと 11 二百ひやく人にんの招まねかれたる者ものエルサレムよりアブサロムとともにゆけり彼かれらは何なに心ごころなくゆきて何事なにごとをもしらざりき 12 アブサロム犧牲いけにへをささぐる時ときにダビデの議官ぎくわんギロ人びとアヒトペルを其その邑まちギロより呼よびよせたり徒と黨たう强つよくして民たみ次󠄄第しだいにアブサロムに加くははりぬ

13 爰こゝに使󠄃者つかひダビデに來きたりてイスラエルの人ひとの心こゝろアブサロムにしたがふといふ 14 ダビデおのれと共ともにエルサレムに居をる凡すべての僕しもべにいひけるは起󠄃たてよ我われら逃󠄄にげん然しからずば我われらアブサロムより遁󠄅のがるるあたはざるべし急󠄃いそぎ往󠄃ゆけ恐おそらくは彼かれ急󠄃いそぎて我われらに追󠄃おひつき我儕われらに害󠄅がいを蒙かうむらせ刃󠄃やいばをもて邑まちを擊うたん 15 王わうの僕しもべ等ら王わうにいひけるは視みよ僕しもべ等ら王わうわが主しゆの選󠄄えらむところを凡すべて爲なさん 16 王わういでゆき其その全󠄃家ぜんかこれにしたがふ王わう十じふ人にんの妾めかけなる婦󠄃をんなを遺󠄃のこして家いへをまもらしむ 17 王わういでゆき民たみみな之これにしたがふ彼等かれら遠󠄄とほくの家いへに息やすめり 18 かれの僕しもべ等らみな其その傍かたはらに進󠄃すゝみケレテ人びととペレテ人びとおよび彼かれにしたがひてガテよりきたれる六百ぴやく人にんのガテ人びとみな王わうのまへに進󠄃すゝめり
 592㌻ 

19 時ときに王わうがガテ人びとイツタイにいひけるは何なにゆゑに爾なんぢもまた我われらとともにゆくや爾なんぢかへりて王わうとともにをれ爾なんぢは外國人ことくにびとにして移住󠄃うつりて處ところをもとむる者ものなり 20 爾なんぢは昨日きのふ來きたれり我われは今日こんにちわが得うるところに往󠄃ゆくなれば豈いかで爾なんぢをして我われらとともにさまよはしむべけんや爾なんぢ歸かへり爾なんぢの兄弟きやうだいをも携つれ歸かへるべしねがはくは恩めぐみと眞󠄃實まこと爾なんぢとともにあれ 21 イツタイ王わうに答こたへていひけるはヱホバは活いく王わうわが主しゆは活いく誠󠄃まことに王わうわが主しゆいかなる處ところに坐いますとも生いき死しにともに僕しもべもまた其處そこに居をるべし 22 ダビデ、イツタイにいひけるは進󠄃すゝみゆけガテ人びとイツタイ乃すなはち進󠄃すゝみかれのすべての從者じふしやおよびかれとともにある妻つま子こ皆みな進󠄃すゝめり 23 國こく中ちう皆みな大おほ聲ごゑをあげて哭なき民たみ皆みな進󠄃すゝむ王わうもまたキデロン川がはを渡わたりて進󠄃すゝみ民たみ皆みな進󠄃すゝみて野のの道󠄃みちにおもむけり〘454㌻〙

24 視みよザドクおよび俱ともにあるレビ人びともまた皆みな神かみの契󠄅約けいやくの櫃はこを舁かきていたり神かみの櫃はこをおろして民たみの悉こと〴〵く邑まちよりいづるをまてりアビヤタルもまたのぼれり 25 ここに王わうザドクにいひけるは神かみの櫃はこを邑まちに舁かきもどせ若もし我われヱホバのまへに恩めぐみをうるならばヱホバ我われを携ひきかへりて我われにこれを見しめし其その往󠄃處すみかを見しめしたまはん 26 されどヱホバもし汝なんぢを悅よろこばずと斯かくいひたまはば視みよ我われは此こゝにあり其その目めに善よしと見みゆるところを我われになしたまへ 27 王わうまた祭司さいしザドクにいひけるは汝なんぢ先見者せんけんしや汝なんぢらの二人ふたりの子こ即すなはち汝なんぢの子こアヒマアズとアビヤタルの子こヨナタンを伴󠄃ともなひて安然やすらかに城󠄃邑まちに歸かへれ 28 見みよ我われは汝なんぢより言ことばのきたりて我われに吿つぐるまで野のの渡わたり場ばに留とゞまらんと 29 ザドクとアビヤタルすなはち神かみの櫃はこをエルサレムに舁かきもどりて彼處かしこに止とゞまれり

30 ここにダビデ橄欖山かんらんざんの路みちを陟のぼりしが陟のぼるときに哭なき其その首かうべを蒙つゝみて跣足はだしにて行ゆけりかれと俱ともにある民たみ皆みな各おの〳〵其その首かうべを蒙つゝみてのぼり哭なきつつのぼれり 31 時ときにアヒトペルがアブサロムに與くみせる者ものの中うちにあることダビデに聞きこえければダビデいふヱホバねがはくはアヒトペルの計策はかりごとを愚おろかならしめたまへと
 593㌻ 
32 ダビデ嶺いただきにある神かみを拜はいする處ところに至いたれる時とき視みよアルキ人びとホシヤイ衣ころもを裂さき土つちを頭あたまにかむりてきたりてダビデを迎󠄃むかふ 33 ダビデかれにいひけるは爾なんぢ若もし我われとともに進󠄃すゝまば我われの負󠄅にとなるべし 34 されど汝なんぢもし城󠄃邑まちにかへりてアブサロムにむかひ王わうよ我われ爾なんぢの僕しもべとなるべし此これまで爾なんぢの父󠄃ちゝの僕しもべたりしごとく今いままた汝なんぢの僕しもべとなるべしといはば爾なんぢはわがためにアヒトペルの計策はかりごとを敗やぶるにいたらん 35 祭司さいしザドクとアビヤタル爾なんぢとともに彼處かしこにあるにあらずや是故このゆえに爾なんぢが王わうの家いへより聞きゝたる事ことはことごとく祭司さいしザドクとアビヤタルに吿つぐべし 36 視みよかれらとともに彼處かしこにはその二人ふたりの子こ即すなはちザドクの子こアヒマアズとアビヤタルの子こヨナタンをるなり爾なんぢら其その聞きゝたる事ことをことごとく彼等かれらの手てによりて我われに通󠄃つうずべし 37 ダビデの友ともホシヤイすなはち城󠄃邑まちにいたりぬ時ときにアブサロムはエルサレムに入いり居ゐたり

第16章

1 ダビデ少すこしく嶺いただきを過󠄃すぎゆける時とき視みよメピボセテの僕しもべヂバ鞍くらおける二頭ふたつの驢馬ろばを引ひき其その上うへにパン二百ひやく乾葡萄ほしぶだう一いつ百ぴやく球ふさ乾ひ棗なつめの團塊かたまり一いつ百ぴやく酒さけ一ひと嚢ふくろを載のせきたりてダビデを迎󠄃むかふ 2 王わうヂバにいひけるは此これ等らは何なになるかヂバいひけるは驢馬ろばは王わうの家族かぞくの乘のるためパンと乾ひ棗なつめは少者わかものの食󠄃くらふため洒さけは野のに困憊󠄂つかれたる者ものの飮のむためなり 3 王わういひけるは爾なんぢの主人しゆじんの子こは何處いづこにあるやヂバ王わうにいひけるはかれはエルサレムに止とゞまる其そは彼かれイスラエルの家いへ今日こんにち我わが父󠄃ちゝの國くにを我われにかへさんと言いひをればなり〘455㌻〙 4 王わうヂバにいひけるは視みよメピボセテの所󠄃有󠄃ものは悉こと〴〵く爾なんぢの所󠄃有󠄃ものとなるべしヂバいひけるは我われ拜はいす王わうわが主しゆよ我われをして爾なんぢのまへに恩めぐみを蒙かうむらしめたまへ

5 斯かくてダビデ王わうバホリムにいたるに視みよ彼處かしこよりサウルの家いへの族やからの者もの一人ひとり出いできたる其その名なをシメイといふゲラの子こなり彼かれ出いできたりて來きたりつつ詛のろへり 6 又󠄂また彼かれダビデとダビデ王わうの諸もろ〳〵の臣僕けらいにむかひて石いしを投なげたり時ときに民たみと勇󠄃士ゆうし皆みな王わうの左さ右いうにあり
 594㌻ 
7 シメイ詛のろひの中うちに斯かくいへり汝なんぢ血ちを流ながす人ひとよ爾なんぢ邪󠄅よこしまなる人ひとよ出いでされ出いでされ 8 爾なんぢが代かはりて位くらゐに登のぼりしサウルの家いへの血ちを凡すべてヱホバ爾なんぢに歸きしたまへりヱホバ國くにを爾なんぢの子こアブサロムの手てに付わたしたまへり視みよ爾なんぢは血ちを流ながす人ひとなるによりて禍患わざはひの中うちにあるなり

9 ゼルヤの子こアビシヤイ王わうにいひけるは此この死しにたる犬いぬなんぞ王わうわが主しゆを詛のろふべけんや請󠄃こふ我われをして渉わたりゆきてかれの首くびを取とらしめよ 10 王わういひけるはゼルヤの子等こらよ爾なんぢらの與あづかるところにあらず彼かれの詛のろふはヱホバ彼かれにダビデを詛のろへと言いひたまひたるによるなれば誰たれか爾なんぢなんぞ然しかするやと言いふべけんや 11 ダビデ又󠄂またアビシヤイおよび己おのれの諸すべての臣僕けらいにいひけるは視みよわが身みより出いでたるわが子こわが生命いのちを求もとむ况いはんや此このベニヤミン人びとをや彼かれを聽ゆるして詛のろはしめよヱホバ彼かれに命めいじたまへるなり 12 ヱホバわが艱難かんなんを俯視かへりみたまふことあらん又󠄂またヱホバ今日こんにち彼かれの詛のろひのために我われに善ぜんを報むくいたまふことあらんと 13 斯かくてダビデと其その從者じふしや途󠄃みちを行ゆきけるにシメイはダビデに對むかへる山やまの傍かたはらに行ゆきて行ゆきつつ詛のろひまた彼かれにむかひて石いしを投なげ塵ちりを揚あげたり 14 王わうおよび俱ともにある民たみ皆みなアエピムに來きたりて彼處かしこに息いきをつげり

15 偖さてアブサロムと總󠄂すべての民たみイスラエルの人々ひと〴〵エルサレムに至いたれりアヒトペルもアブサロムとともにいたる 16 ダビデの友ともなるアルキ人びとホシヤイ、アブサロムの許もとに來きたりし時ときアブサロムにいふ願ねがはくは王わう壽いのちながかれ願ねがはくは王わう壽いのちながかれ 17 アブサロム、ホシヤイにいひけるは此これは爾なんぢが其その友ともに示しめす厚あつき意こゝろなるや爾なんぢなんぞ爾なんぢの友ともと往󠄃ゆかざるやと 18 ホシヤイ、アブサロムにいひけるは然しからずヱホバと此この民たみとイスラエルの總󠄂すべての人々ひと〴〵の選󠄄えらむ者ものに我われは屬ぞくし且かつ其人そのひととともに居をるべし 19 且かつ又󠄂また我われ誰たれに事つかふべきか其その子この前󠄃まへに事つかふべきにあらずや我われは爾なんぢの父󠄃ちゝのまへに事つかへしごとく爾なんぢのまへに事つかふべし〘456㌻〙
 595㌻ 

20 爰こゝにアブサロム、アヒトベルにいひけるは我儕われら如何いかに爲なすべきか爾等なんぢら計はかりごとを爲なすべしと 21 アヒトペル、アブサロムにいひけるは爾なんぢの父󠄃ちゝが遺󠄃のこして家いへを守まもらしむる妾等めかけたちの處ところに入いれ然しからばイスラエル皆みな爾なんぢが其その父󠄃ちゝに惡にくまるるを聞きかん而しかして爾なんぢとともにをる總󠄂すべての者ものの手て强つよくなるべしと 22 是こゝにおいて屋脊やねにアブサロムのために天てん幕まくを張はりければアブサロム、イスラエルの目めのまへにて其その父󠄃ちゝの妾等めかけたちの處ところに入いりぬ 23 當時そのころアヒトペルが謀はかれる謀計はかりごとは神かみの言ことばに問とひたるごとくなりきアヒトペルの謀計はかりごとは皆みなダビデとアブサロムとに俱ともに是かくのごとく見みえたりき

第17章

1 時ときにアヒトペル、アブサロムにいひけるは請󠄃こふ我われに一萬まん二千せんの人ひとを擇えらみ出いださしめよ我われ起󠄃たちて今夜こんやダビデの後あとを追󠄃おひ 2 彼かれが憊󠄂つかれて手弱󠄃たよわくなりし所󠄃ところを襲󠄂おそふて彼かれをおびえしめん而しかして彼かれとともにをる民たみの逃󠄄にげん時ときに我われ王わう一人ひとりを擊うちとり 3 總󠄂すべての民たみを爾なんぢに歸きせしむべし夫それ衆みなの歸きするは爾なんぢが求もとむる此人このひとに依よるなれば民たみみな平󠄃穩おだやかになるべし 4 此この言ことばアブサロムの目めとイスラエルの總󠄂すべての長老としよりの目めに的當よしと見みえたり

5 アブサロムいひけるはアルキ人びとホシヤイをも召めしきたれ我等われら彼かれが言いふ所󠄃ところをも聞きかんと 6 ホシヤイ乃すなはちアブサロムに至いたるにアブサロムかれにかたりていひけるはアヒトペル是かくのごとく言いへり我等われら其その言ことばを爲なすべきか若もし可よからずば爾なんぢ言いふべし 7 ホシヤイ、アブサロムにいひけるは此時このときにあたりてアヒトペルが授さづけし計略はかりごとは善よからず 8 ホシヤイまたいひけるは爾なんぢの知しるごとく爾なんぢの父󠄃ちゝと其その從者じふしやは勇󠄃士ゆうしなり且かつ彼等かれらは野のにて其その子こを奪うばはれたる熊くまの如ごとく其その氣いき激怒いらだちをれり又󠄂また爾なんぢの父󠄃ちゝは戰いくさ士びとなれば民たみと共ともに宿やどらざるべし 9 彼かれは今いま何いづれの穴󠄄あなにか何いづれの處ところにか匿かくれをる若もし數󠄄人すうにんの者もの手て始はじめに仆たふれなば其それを聞きく者ものは皆みなアブサロムに從したがふ者ものの中うちに敗やぶれありと言いはん 10 しからば獅子しゝの心こゝろのごとき心こゝろある勇󠄃猛たけき夫ひとといふとも全󠄃まつたく挫碎くぢけん其そはイスラエル皆みな爾なんぢの父󠄃ちゝの勇󠄃士ゆうしにして彼かれとともにある者ものの勇󠄃猛たけき人ひとなるをしればなり 11 我われは計議はかるイスラエルをダンよりベエルシバにいたるまで海濱はまの沙いさごの多おほきが如ごとくに悉こと〴〵く爾なんぢの處ところにつどへ集あつめて爾なんぢ親みづから戰陣たたかひに臨のぞむべし
 596㌻ 
12 我等われら彼かれの見み出いださるる處ところにて彼かれを襲󠄂おそひ露つゆの地ちに下おりるがごとく彼かれのうへに降󠄄くだらんしかして彼かれおよび彼かれとともにあるすべての人々ひと〴〵を一人ひとりも遺󠄃のこさゞるべし 13 若もし彼かれ何いづれかの城󠄃邑まちに集あつまらばイスラエル皆みな繩󠄂なはを其その城󠄃邑まちにかけ我等われらこれを河かはに曳ひきたふして其處そこに一ひとつの小こ石いしも見みえざらしむべしと〘457㌻〙 14 アブサロムとイスラエルの人々ひと〴〵皆みなアルキ人びとホシヤイの謀計はかりごとはアヒトペルの謀計はかりごとよりも善よしといふ其そはヱホバ、アブサロムに禍わざはひを降󠄄くださんとてヱホバ、アヒトペルの善よき謀計はかりごとを破やぶることを定さだめたまひたればなり

15 爰こゝにホシヤイ祭司さいしザドクとアビヤタルにいひけるはアヒトペル、アブサロムとイスラエルの長老等としよりたちのために斯々しか〴〵に謀はかれりきた我われは斯々しか〴〵に謀はかれり 16 されば爾なんぢら速󠄃すみやかに人ひとを遣󠄃つかはしてダビデに吿つげて今夜こんや野のの渡わたり場ばに宿やどることなく速󠄃すみやかに渡わたりゆけといへおそらくは王わうおよび俱ともにある民たみ皆みな呑のみつくされん 17 時ときにヨナタンとアヒマアズはエンロゲルに俟まち居ゐたり是これは城󠄃邑まちにいるを見みられざらんとてなり爰こゝに一人ひとりの仕女つかへめゆきて彼等かれらに吿つげければ彼かれらダビデ王わうに吿つげんとて往󠄃ゆく 18 しかるに一人ひとりの少者わかものかれらを見みてアブサロムにつげたりされど彼等かれら二人ふたりは急󠄃いそぎさりてバホリムの或ある人ひとの家いへにいたる其人そのひとの庭󠄄にはに井ゐどありてかれら其處そこにくだりければ 19 婦󠄃をんな蓋おひをとりて井ゐどの口くちのうへに掩かけ其その上うへに擣つきたる麥むぎをひろげたり故ゆゑに事こと知しれざりき 20 時ときにアブサロムの僕しもべ等ら其その婦󠄃をんなの家いへに來きたりていひけるはアヒマアズとヨナタンは何處いづくにをるや婦󠄃をんなかれらに彼かの人々ひと〴〵は小こ川がはを濟わたれりといふかれら尋󠄃たづねたれども見み當あたらざればエルサレムに歸かへれり

21 彼等かれらが去さりし時ときかの二人ふたりは井ゐどよりのぼりて往󠄃ゆきてダビデ王わうに吿つげたり即すなはちダビデに言いひけるは起󠄃たちて速󠄃すみやかに水みづを濟わたれ其そはアヒトベル斯かく爾等なんぢらについて謀計はかりごとを爲なしたればなりと 22 ダビデ起󠄃たちて己おのれとともにある凡すべての民たみとともにヨルダンを濟わたれり曙󠄃あけぼのには一人ひとりもヨルダンを濟わたらざる者ものはなかりき
 597㌻ 
23 アヒトベルは其その謀計はかりごとの行おこなはれざるを見みて其その驢馬ろばに鞍くらおき起󠄃たちて其その邑まちに往󠄃ゆきて其その家いへにいたり家いへの人ひとに遺󠄃ゆゐ言ごんして自みづから縊󠄃くびれ死しにて其その父󠄃ちゝの墓はかに葬はうむらる

24 爰こゝにダビデ、マナハイムに至いたる又󠄂またアブサロムは己おのれとともにあるイスラエルの凡すべての人々ひと〴〵とともにヨルダンを濟わたれり 25 アブサロム、アマサをヨアブの代かはりに軍ぐんの長かしらと爲なせりアマサは夫かのナハシの女むすめにてヨアブの母はゝゼルヤの妹いもうとなるアビガルに通󠄃つうじたるイシマエル人びと名なはヱテルといふ人ひとの子こなり 26 かくてイスラエルとアブサロムはギレアデの地ちに陣ぢんどれり

27 ダビデ、マハナイムにいたれる時ときアンモンの子孫ひと〴〵の中うちなるラバのナハシの子こシヨビとロデバルのアンミエルの子こマキルおよびロゲリムのギレアデ人びとバルジライ〘458㌻〙 28 臥床とこと鍋なべ釜󠄃かまと陶やきものの器うつはと小麥こむぎと大おほ麥むぎと粉󠄃こなと烘麥いりむぎと豆まめと小豆あづきの烘いりたる者ものと 29 蜜みつと牛酪󠄂ぎうらくと羊ひつじと犢こうしをダビデおよび俱ともにある民たみの食󠄃くらふために持もち來きたれり其そは彼等かれら民たみは野のにて饑󠄃うゑ憊󠄂つかれ渇かわくならんと謂いひたればなり

第18章

1 爰こゝにダビデ己おのれとともにある民たみを核󠄂しらべて其その上うへに千夫せんにんの長かしら百夫ひやくにんの長かしらを立たてたり 2 しかしてダビデ民たみを三みつに分󠄃わかちて其その一ひとつをヨアブの手てに託あづけ一ひとつをゼルヤの子こヨアブの兄弟きやうだいアビシヤイの手てに託あづけ一ひとつをガテ人びとイツタイの手てに託あづけたりかくして王わう民たみにいひけるは我われもまた必かならず汝なんぢらとともに出いでんと 3 されど民たみいふ汝なんぢは出いづべからず我儕われら如何いかに逃󠄄にぐるとも彼等かれらは我儕われらに心こゝろをとめじ又󠄂また我儕われら半󠄃なかば死しぬとも我儕われらに心こゝろをとめざるべしされど汝なんぢは我儕われらの一萬まんに等ひとし故ゆゑに汝なんぢは城󠄃邑まちの中うちより我儕われらを助たすけなば善よし 4 王わうかれらにいひけるは汝等なんぢらの目めに善よしと見みゆるところを爲なすべしとかくて王わう門もんの傍かたはらに立たち民たみ皆みな或あるひは百ひやく人にん或あるひは千せん人にんとなりて出いづ 5 王わうヨアブ、アビシヤイおよびイツタイに命めいじてわがために少年せうねんアブサロムを寛やはらかに待あしらへよといふ王わうのアブサロムの事ことについて諸すべての將官かしらに命めいを下くだせる時とき民たみ皆みな聞きけり
 598㌻ 

6 爰こゝに民たみイスラエルにむかひて野のに出いでエフライムの叢林もりに戰たゝかひしが 7 イスラエルの民たみ其處そこにてダビデの臣僕けらいのまへに敗やぶる其その日ひ彼處かしこの戰死うちじに大おほいにして二萬まんにいたれり 8 しかして戰たたかひ徧あまねく其その地ちの表おもてに廣ひろがりぬ是この日ひ叢林もりの滅ほろぼせる者ものは刀劒かたなの滅ほろぼせる者ものよりも多おほかりき

9 爰こゝにアブサロム、ダビデの臣僕けらいに行ゆき遭󠄃あへり時ときにアブサロム騾馬むまに乘のり居ゐたりしが騾馬むま大おほいなる橡樹かしのきの繁しげき枝えだの下したを過󠄃すぎければアブサロムの頭あたま其その橡かしに繋かゝりて彼かれ天地てんちのあひだにあがれり騾馬むまはかれの下したより行ゆき過󠄃すぎたり 10 一箇ひとりの人ひと見みてヨアブに吿つげていひけるは我われアブサロムが橡樹かしのきに懸かゝりをるを見みたりと 11 ヨアブ其その吿つげたる人ひとにいひけるはさらば爾なんぢ見みて何故なにゆゑに彼かれを其處そこにて地ちに擊うち落おとさざりしや我われ爾なんぢに銀ぎん十枚まいと一本ひとすじの帶おびを與あたへんものを 12 其人そのひとヨアブにいひけるは假令たとひわが手てに銀ぎん千せん枚まいを受うくべきも我われは手てをいだして王わうの子こに敵てきせじ其そは王わう我儕われらの聞きけるまへにて爾なんぢとアビシヤイとイツタイに命めいじて爾なんぢら各おの〳〵少年せうねんアブサロムを害󠄅がいするなかれといひたまひたればなり 13 我われ若もし反そむいてかれの生命いのちを戕賊󠄄そこなはば何事なにごとも王わうに隱かくるる所󠄃ところなければ爾なんぢ自みづから立たちて我われを責せめんと 14 時ときにヨアブ我われかく爾なんぢとともに滯とゞまるべからずといひて手てに三本みすぢの槍やりを携たづさへゆきて彼かの橡樹かしのきの中なかに尙なほ生いきをるアブサロムの胸むねに之これを衝つき通󠄃とほせり〘459㌻〙 15 ヨアブの武器ぶきを執とる十人にんの少者わかもの繞とりまきてアブサロムを擊うち之これを死しなしめたり

16 かくてヨアブ喇叭らつぱを吹ふきければ民たみイスラエルの後あとを追󠄃おふことを息やめてかへれりヨアブ民たみを止とゞめたればなり 17 衆ひと〴〵アブサロムを將とりて叢林もりの中なかなる大おほいなる穴󠄄あなに投なげいれ其その上うへに甚はなはだ大おほきく石いしを疊つみあげたり是こゝにおいてイスラエル皆みなおのおの其その天てん幕まくに逃󠄄にげかへれり 18 アブサロム我われはわが名なを傳つたふべき子こなしと言いひて其その生いける間あひだに己おのれのために一ひとつの表柱󠄃はしらを建󠄄たてたり王わうの谷たににあり彼かれおのれの名なを其その表柱󠄃はしらに與つけたり其その表柱󠄃はしら今日こんにちにいたるまでアブサロムの碑ひと稱󠄄となへらる
 599㌻ 

19 爰こゝにザドクの子こアヒマアズいひけるは請󠄃こふ我われをして趨はしりて王わうにヱホバの王わうをまもりて其その敵てきの手てを免まぬかれしめたまひし音󠄃信おとづれを傳つたへしめよと 20 ヨアブかれにいひけるは汝なんぢは今日けふ音󠄃信おとづれを傳つたふるものとなるべからず他ほかの日ひに音󠄃信おとづれを傳つたふべし今日けふは王わうの子こ死しにたれば汝なんぢ音󠄃信おとづれを傳つたふべからず 21 ヨアブ、クシ人びとにいひけるは往󠄃ゆきて爾なんぢが見みたる所󠄃ところを王わうに吿つげよクシ人びとヨアブに禮れいをなして走はしれり 22 ザドクの子こアヒマアズ再ふたゝびヨアブにいひけるは請󠄃こふ何いづれにもあれ我われをも亦またクシ人びとの後あとより走はせゆかしめよヨアブいひけるは我わが子こよ爾なんぢは充じう分󠄃ぶんの音󠄃信おとづれを持もたざるに何故なにゆゑに走はしりゆかんとするや 23 かれいふ何いづれにもあれ我われをして走はしりゆかしめよとヨアブかれにいふ走はしるべし是こゝにおいてアヒマアズ低地くぼちの路みちをはしりてクシ人びとを走はせ越こえたり

24 時ときにダビデは二ふたつの門もんの間あひだに坐ざしゐたり爰こゝに守望󠄇うかがふ者もの門もんの蓋上やねにのぼり石墻いしがきにのぼりて其その目めを擧あげて見みるに視みよ獨たゞ一人ひとりにて走はせきたる者ものあり 25 守望󠄇うかがふ者もの呼よばはりて王わうに吿つげければ王わういふ若もし獨ひとりならば口くちに音󠄃信おとづれを持もつならんと其人そのひと進󠄃すゝみ來きたりて近󠄃ちかづけり 26 守望󠄇うかがふ者もの復また一人ひとりの走はしりきたるを見みしかば守望󠄇うかがふ者もの守門もんをまもる者ものに呼よばはりて言いふ獨たゞ一人ひとりにて走はせきたる者ものあり王わういふ其人そのひともまた音󠄃信おとづれを持もつものなり 27 守望󠄇うかがふ者もの言いふ我われ先さきだつ者ものの走はしるを見みるにザドクの子こアヒマアズの走はしるが如ごとしと王わういひけるは彼かれは善よき人ひとなり善よき音󠄃信おとづれを持もち來きたるならん

28 アヒマアズ呼よばはりて王わうにいひけるはねがはくは平󠄃安やすらかなれとかくて王わうのまへに地ちに伏ふしていふ爾なんぢの神かみヱホバは讃ほむべきかなヱホバかの手てをあげて王わうわが主しゆに敵てきしたる人々ひと〴〵を付わたしたまへり 29 王わういひけるは少年せうねんアブサロムは平󠄃安やすらかなるやアヒマアズこたへけるは王わうの僕しもべヨアブ僕しもべを遣󠄃つかはせし時とき我われ大おほいなる噪さわぎを見みたれども何なにをも知しらざるなり〘460㌻〙 30 王わういひけるは側わきにいたりて其處そこに立たてよと乃すなはち側わきにいたりて立たつ
 600㌻ 

31 時ときに視みよクシ人びと來きたれりクシ人びといひけるはねがはくは王わう音󠄃信おとづれを受うけたまへヱホバ今日こんにち爾なんぢをまもりて凡すべて爾なんぢにたち逆󠄃さからふ者ものの手てを免まぬかれしめたまへり 32 王わうクシ人びとにいひけるは少年せうねんアブサロムは平󠄃安やすらかなるやクシ人びといひけるはねがはくは王わうわが主しゆの敵てきおよび凡すべて汝なんぢに起󠄃たち逆󠄃さからひて害󠄅がいをなさんとする者ものは彼かの少年せうねんのごとくなれと 33 王わう大おほいに感いたみ門もんの樓にかいにのぼりて哭なけり彼かれ行ゆきながらかくいへりわが子こアブサロムよわが子こわが子こアブサロムよ鳴呼あゝわれ汝なんぢに代かはりて死しにたらん者ものをアブサロムわが子こよわが子こよ

第19章

1 時ときにヨアブに吿つぐる者ものありていふ視みよ王わうはアブサロムの爲ために哭なき悲かなしむと 2 其その日ひの勝󠄃利かちは凡すべての民たみの悲哀かなしみとなれり其そは民たみ其その日ひ王わうは其その子このために憂うれふと言いふを聞きゝたればなり 3 其その日ひ民たみは戰爭たたかひに逃󠄄にげて羞はぢたる民たみの竊しのびて去さるがごとく竊しのびて城󠄃邑まちにいりぬ 4 王わうは其その面かほを掩おほへり王わう大おほ聲ごゑに叫さけびてわが子こアブサロムよアブサロムわが子こよわが子こよといふ 5 ここにヨアブ家いへにいり王わうの許もとにいたりていひけるは汝なんぢ今日こんにち汝なんぢの生命いのちと汝なんぢの男子むすこ汝なんぢの女子むすめの生命いのちおよび汝なんぢの妻つま等たちの生命いのちと汝なんぢの妾等めかけたちの生命いのちを救すくひたる汝なんぢの凡すべての臣僕けらいの顏かほを羞はぢさせたり 6 是こは汝なんぢおのれを惡にくむ者ものを愛あいしおのれを愛あいする者ものを惡にくむなり汝なんぢ今日けふ汝なんぢが諸侯伯つかさをも諸僕けらいをも顧󠄃かへりみざるを示しめせり今日けふ我われさとる若もしアブサロム生いきをりて我儕われら皆みな死しにたらば汝なんぢの目めに適󠄄かなひしならん 7 されど今いま立たちて出いで汝なんぢの諸僕けらいたちを慰なぐさめてかたるべし我われヱホバを指さして誓ちかふ汝なんぢ若もし出いでずば今夜こんや一人ひとりも汝なんぢとともに止とゞまるものなかるべし是これは汝なんぢが若わかき時ときより今いまにいたるまでに蒙かうむりたる諸もろ〳〵の災禍わざはひよりも汝なんぢに惡あしかるべし 8 是こゝに於おいて王わうたちて門もんに坐ざす人々ひと〴〵凡すべての民たみに吿つげて視みよ王わうは門もんに坐ざし居をるといひければ民たみ皆みな王わうのまへにいたる   然されどイスラエルはおのむの其その天てん幕まくに逃󠄄にげかへれり

9 イスラエルの諸もろ〳〵の支󠄂派󠄄わかれの中うちに民たみ皆みな爭あらそひていひけるは王わうは我儕われらを敵てきの手てより救すくひいだしまた我儕われらをペリシテ人びとの手てより助たすけいだせりされど今いまはアブサロムのために國くにを逃󠄄にげいでたり
 601㌻ 
10 また我儕われらが膏あぶらそそぎて我儕われらの上うへにかきしアブサロムは戰爭いくさに死しねりされば爾なんぢら何なんぞ王わうを導󠄃みちびきかへらんことと言いはざるや

11 ダビデ王わう祭司さいしザドクとアビヤタルに言いひつかはしけるはユダの長老等としよりたちに吿つげて言いヘイスラエルの全󠄃家ぜんかの言語ことば王わうの家いへに達󠄃たつせしに爾なんぢら何なんぞ王わうを其その家いへに導󠄃みちびきかへる最後いやはてとなるや〘461㌻〙 12 爾等なんぢらはわが兄弟きやうだい爾なんぢらはわが骨こつ肉󠄁にくなりしかるになんぞ爾等なんぢら王わうを導󠄃みちびき歸かへる最後いやはてとなるやと 13 又󠄂またアマサに言いふべし爾なんぢはわが骨こつ肉󠄁にくにあらずや爾なんぢヨアブにかはりて常つねにわがまへにて軍長ぐんのかしらたるべし若もしからずば神かみ我われに斯かくなし又󠄂また重かさねてかくなしたまへと 14 かくダビデ、ユダの凡すべての人ひとをして其心そのこころを傾かたむけて一いち人にんのごとくにならしめければかれら王わうにねがはくは爾なんぢおよび爾なんぢの諸すべての臣僕けらい歸かへりたまへといひおくれり 15 是こゝにおいて王わう歸かへりてヨルダンにいたるにユダの人々ひと〴〵王わうを迎󠄃むかへんとて來きたりてギルガルにいたり王わうを送󠄃おくりてヨルダンを濟わたらんとす

16 時ときにバホリムのベニヤミン人びとゲラの子こシメイ急󠄃いそぎてユダの人々ひと〴〵とともに下くだりダビデ王わうを迓むかふ 17 一いつ千せんのベニヤミン人びと彼かれとともにあり亦またサウルの家いへの僕しもべヂバも其その十五人にんの男子むすこと二十人にんの僕しもべをしたがへて偕ともに居ゐたりしが皆みな王わうのまへにむかひてヨルダンをこぎ渡わたりれり 18 時ときに王わうの家族かぞくを濟わたしまた王わうの目めに善よしと見みゆるところを爲なさんとて濟舟わたしぶねを濟わたせり爰こゝにゲラの子こシメイ、ヨルダンを濟わたれる時とき王わうのまへに伏ふして 19 王わうにいひけるはわが主しゆよねがはくは罪つみを我われに歸きするなかれまた王わうわが主しゆのエルサレムより出いでたまへる日ひに僕しもべが爲なしたる惡あしき事ことを記憶おぼえたまふなかれねがはくは王わうこれを心こゝろに置おきたまふなかれ 20 其そは僕しもべ我わが罪つみを犯をかしたるを知しればなり故ゆゑに視みよ我われ今日こんにちヨセフの全󠄃家ぜんかの最初いやさきに下くだり來きたりて王わうわが主しゆを迓むかふと
 602㌻ 

21 然しかるにゼルヤの子こアビシヤイ答こたへていひけるはシメイはヱホバの膏あぶらそそぎし者ものを詛のろひたるに因よりて其それがために誅ころさるべきにあらずやと 22 ダビデいひけるは爾なんぢらゼルヤの子こよ爾なんぢらのあづかるところにあらず爾等なんぢら今日けふ我われに敵てきとなる今日けふ豈あにイスラエルの中うちにて人ひとを誅ころすべけんや我われ豈あにわが今日けふイスラエルの王わうとなりたるをしらざらんやと 23 是こゝをもて王わうはシメイに爾なんぢは誅ころされじといひて王わうかれに誓ちかへり

24 爰こゝにサウルの子こメピボセテ下くだりて王わうをむかふ彼かれは王わうの去さりし日ひより安やすらかに歸かへれる日ひまで其その足あしを飾󠄃かざらず其その鬚ひげを飾󠄃かざらず又󠄂また其その衣ころもを濯󠄄あらはざりき 25 彼かれエルサレムよりきたりて王わうを迓むかふる時とき王わうかれにいひけるはメビボセテ爾なんぢなんぞ我われとともに往󠄃ゆかざりしや 26 彼かれこたへけるはわが主しゆ王わうよわが僕けらい我われを欺あざむけり僕しもべはわれ驢馬ろばに鞍くらおきて其それに乘のりて王わうの處ところにゆかんといへり僕しもべ跛者あしなへなればなり 27 しかるに彼かれ僕しもべを王わうわが主しゆに讒言ざんげんせり然しかれども王わうわが主しゆは神かみの使󠄃つかひのごとし故ゆゑに爾なんぢの目めに善よしと見みゆるところを爲なしたまへ〘462㌻〙 28 わが父󠄃ちゝの全󠄃家ぜんかは王わうわが主しゆのまへには死しにたる人ひとなるのみなるに爾なんぢ僕しもべを爾なんぢの席せきにて食󠄃くらふ者ものの中うちに置おきたまへりされば我われ何なにの理ことはりありてか重かさねて王わうに哀訴うつたふることをえん 29 王わうかれにいひけるは爾なんぢなんぞ重かさねて爾なんぢの事ことを言いふや我われいふ爾なんぢとヂバ其その地ちを分󠄃わかつべし 30 メピボセテ王わうにいひけるは王わうわが主しゆ安然やすらかに其その家いへに歸かへりたまひたればかれに之これを悉こと〴〵くとらしめたまへと

31 爰こゝにギレアデ人びとバルジライ、ロゲリムより下くだり王わうを送󠄃おくりてヨルダンを渡わたらんとて王わうとともにヨルダンを濟わたれり 32 バルジライは甚はなはだ老おいたる人ひとにて八十歳さいなりきかれは甚はなはだ大おほいなる人ひとなれば王わうのマハナイムに留とゞまれる間あひだ王わうを養󠄄やしなへり 33 王わうバルジライにいひけるは爾なんぢ我われとともに濟わたり來きたれ我われエルサレムにて爾なんぢを我われとともに養󠄄やしなはん 34 バルジライ王わうにいひけるはわが生命いのちの年としの日ひ尙なほ幾何いくばくありてか我われ王わうとともにエルサレムに上のぼらんや 35 我われは今日こんにち八十歳さいなり善よきと惡あしきとを辨わきまへるをえんや僕しもべ其その食󠄃くらふところと飮のむところを味あじはふをえんや我われ再ふたゝび謳歌之うたうたふ男をとこと謳歌之うたうたふ女をんなの聲こゑを聽きゝえんや僕しもべなんぞ尙なほ王わうわが主しゆの累わづらひとなるべけんや
 603㌻ 
36 僕しもべは王わうとともにヨルダンを濟わたりて只たゞ少すこしくゆかん王わうなんぞこの報賞むくいを我われに報むくゆるに及およばんや 37 請󠄃こふ僕しもべを歸かへらしめよ我われ自己おのれの邑まちにてわが父󠄃母ちちははの墓はかの側そばに死しなん但たゞし僕しもべキムハムを視みたまへかれを王わうわが主しゆとともに濟わたり往󠄃ゆかしめたまへ又󠄂また爾なんぢの目めに善よしと見みる所󠄃ところを彼かれになしたまへ 38 王わういひけるはキムハム我われとともに濟わたり往󠄃ゆくべし我われ爾なんぢの目めに善よしと見みゆる所󠄃ところをかれに爲なさん又󠄂また爾なんぢが望󠄇のぞみて我われに求もとむる所󠄃ところは皆みな我われ爾なんぢのために爲なすべしと 39 民たみ皆みなヨルダンを濟わたれり王わう渡わたりりし時とき王わうバルジライに接吻くちつけしてこれを祝しゆくす彼かれ遂󠄅つひに己おのれの所󠄃ところに歸かへれり

40 かくて王わうギルガルに進󠄃すゝむにキムハムかれとともに進󠄃すゝめりユダの民たみ皆みな王わうを送󠄃おくれりイスラエルの民たみの半󠄃なかばも亦またしかり 41 是こゝにイスラエルの人々ひと〴〵皆みな王わうの所󠄃ところにいたりて王わうにいひけるは我儕われらの兄弟きやうだいなるユダの人々ひと〴〵何故なにゆゑに爾なんぢを竊ぬすみさり王わうと其その家族かぞくおよびダビデとともなる其その凡すべての從者じふしやを送󠄃おくりてヨルダンを濟わたりしやと 42 ユダの人々ひと〴〵皆みなイスラエルの人々ひと〴〵に對こたへていふ王わうは我われに近󠄃ちかきが故ゆゑなり爾なんぢなんぞ此事このことについて怒いかるや我儕われら王わうの物ものを食󠄃くらひしことあるや王わう我儕われらに賜物たまものを與あたへたることあるや 43 イスラエルの人ひとユダの人ひとに對こたへていひけるは我われは王わうのうちに十とをの分󠄃ぶんを有󠄃もち亦またダビデのうちにも我われは爾なんぢよりも多おほくを有󠄃もつなりしかるに爾なんぢなんぞ我われらを輕かろんじたるやわが王わうを導󠄃みちびきかへらんと言いひしは我われ最初いやさきなるにあらずやとされどユダの人々ひと〴〵の言ことばはイスラエルの人々ひと〴〵の言ことばよりも厲はげしかりき〘463㌻〙

第20章

1 爰こゝに一人ひとりの邪󠄅よこしまなる人ひとあり其その名なをシバといビクリの子こにしてベニヤミン人びとなり彼かれ喇叭らつぱを吹ふきていひけるは我儕われらはダビデの中うちに分󠄃ぶんなし又󠄂またヱサイの子このうちに產業さんげふなしイスラエルよ各人おの〳〵其その天てん幕まくに歸かへれよと 2 是これによりてイスラエルの人ひと皆みなダビデに隨したがふことを止やめてのぼりビクリの子こシバにしたがへり然されどユダの人々ひと〴〵は其その王わうに附つきてヨルダンよりエルサレムにいたれり
 604㌻ 

3 ダビデ、エルサレムにある己おのれの家いへにいたり王わう其その遺󠄃のこして家いへを守まもらせたる妾めかけなる十人にんの婦󠄃をんなをとりてこれを一ひとつの室いへに守まもり置おきて養󠄄やしなへりされどかれらの處ところには入いらざりき斯かくかれらは死しぬる日ひまで閉とぢこめられて生涯しやうがい嫠婦󠄃やもめにてすごせり

4 爰こゝに王わうアマサにいひけるは我わがために三日みつかのうちにユダの人々ひと〴〵を召よびきたれしかして爾なんぢ此處こゝにをれ 5 アマサ乃すなはちユダを召よびあつめんとて往󠄃ゆきたりしが彼かれダビデが定さだめたる期ときよりも長ながく留とゞまれり 6 是こゝにおいてダビデ、アビシヤイにいひけるはビクリの子こシバ今いま我儕われらにアブサロムよりもおほくの害󠄅がいをなさんとす爾なんぢの主しゆの臣僕けらいを率󠄃ひきゐて彼かれの後あとを追󠄃おへ恐おそらくは彼かれ堅固けんごなる城󠄃邑まちを獲えて我儕われらの目めを逃󠄄のがれんと 7 是これによりてヨアブの從者じふしやとケレテ人びととペレテ人びとおよび都すべての勇󠄃士いうし彼かれにしたがびて出いでたり即すなはち彼等かれらエルサレムより出いでてビクリの子こシバの後あとを追󠄃おふ 8 彼等かれらがギベオンにある大おほ石いしの傍かたはらに居をりし時ときアマサかれらにむかひ來きたれり時ときにヨアブ戎󠄂いくさ衣ごろもに帶おびを結しめて衣服󠄃ころもとなし其その上うへに刀かたなを鞘さやにをさめ腰󠄃こしに結むすびて帶おび居ゐたりしが其その劍かたな脱ぬけ墮おちたり 9 ヨアブ、アマサにわが兄弟きやうだいよ爾なんぢは平󠄃康やすらかなるやといひて右みぎの手てをもてアマサの鬚ひげを將とらへて彼かれに接吻くちつけせんとせしが 10 アマサはヨアブの手てにある劍かたなに意こゝろを留とめざりければヨアブ其それをもてアマサの腹はらを刺さして其その膓はらわたを地ちに流ながしいだし重かさねて擊うつに及およばざらしめてこれをころせり   かくてヨアブと其その兄弟きやうだいアビシヤイ、ビクリの子こシバの後あとを追󠄃おへり

11 時ときにヨアブの少者わかものの一人ひとりアマサの側そばにたちていふヨアブを助たすくる者ものとダビデに附從つくものはヨアブの後あとに隨したがへと 12 アマサは血ちに染そみて大路おほぢの中なかに轉まろび居ゐたり斯この人民たみの皆みな立たちどまるを見みてアマサを大路おほぢより田はたけに移うつしたるが其その側かたはらにいたれる者もの皆みな見みて立たちとまりければ衣ころもを其その上うへにかけたり〘464㌻〙 13 アマサ大路おほぢより移うつされければ人ひと皆みなヨアブにしたがひ進󠄃すゝみてビクリの子こシバの後あとを追󠄃おふ
 605㌻ 

14 彼かれイスラエルの凡すべての支󠄂派󠄄わかれの中うちを行ゆきてアベルとベテマアカに至いたるに少年せうねん皆みな集あつまりて亦またかれにしたがひゆけり 15 かくて彼等かれら來きたりて彼かれをアベル、ベテマアカに圍󠄃かこみ城󠄃邑まちにむかひて壘るゐを築きづけり是これは壕ほりの中なかにたてりかくしてヨアブとともにある民たみ皆みな石垣いしがきを崩󠄃くづさんとてこれを擊うち居をりしが 16 一箇ひとりの哲かしこき婦󠄃をんな城󠄃邑まちより呼よばはりていふ爾なんぢら聽きけよ爾なんぢら聽きけよ請󠄃こふ爾なんぢらヨアブに此こゝに近󠄃ちかよれ我われ爾なんぢに言ものいはんと言いへと 17 かれ其その婦󠄃をんなにちかよるに婦󠄃をんないひけるは爾なんぢはヨアブなるやかれ然しかりといひければ婦󠄃をんな彼かれにいふ婢しもめの言ことばを聽きけかれ我われ聽きくといふ 18 婦󠄃をんな即すなはち語かたりていひけるは昔むかし人々ひと〴〵誠󠄃まことに語かたりて人ひと必かならずアベルにおいて索問たづぬべしといひて事ことを終󠄃をふ 19 我われはイスラエルの中うちの平󠄃和おだやかなる忠義ちうぎなる者ものなりしかるに爾なんぢはイスラルの中うちにて母はゝともいふべき城󠄃邑まちを滅ほろぼさんことを求もとむ何なにゆゑに爾なんぢヱホバの產業さんげふを呑のみ盡つくさんとするや 20 ヨアブ答こたへていひけるは決きはめてしからず決きはめてしからずわれ呑のみ盡つくし或あるひは滅ほろぼさんとすることなし 21 其その事ことしからずエフライムの山地やまちの人ひとビクリの子こ名なはシバといふ者もの手てを擧あげて王わうダビデに敵てきせり爾なんぢら只たゞ彼かれ一人ひとりを付わたせ然しからば我われ此この邑まちをさらんと婦󠄃をんなヨアブにいひけるは視みよ彼かれの首級くびは石垣いしがきの上うへより爾なんぢに投なげいだすべし 22 かくて婦󠄃をんな其その智慧󠄄ちゑをもて凡すべての民たみの所󠄃ところにいたりければかれらビクリの子こシバの首級くびを刎はねてヨアブの所󠄃ところに投なげ出いだせり是こゝにおいてヨアブ喇叭らつぱを吹ふきならしければ人々ひと〴〵散ちりて邑まちより退󠄃しりぞきておのおの其その天てん幕まくに還󠄃かへりぬヨアブはエルサレムにかへりて王わうの處ところにいたれり

23 ヨアブはイスラエルの全󠄃ぜん軍ぐんの長かしらなりヱホヤダの子こベナヤはケレテ人びととペレテ人びとの長かしらなり 24 アドラムは徴募ちやうぼの長かしらなりアヒルデの子こヨシヤパテは史󠄃官しくわんなり 25 シワは書記しよき官くわんなりザドクとアビヤタルは祭司さいしなり 26 亦またヤイル人びとイラはダビデの大臣だいじんなり
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第21章

1 ダビデの世よに年とし復また年としと三さん年ねん饑󠄃饉ききんありければダビデ、ヱホバに問とふにヱホバ言いひたまひけるは是これはサウルと血ちを流ながせる其その家いへのためなり其そは彼かれ嘗かつてギベオン人びとを殺ころしたればなりと 2 是こゝにおいて王わうギベオン人びとを召めしてかれらにいへりギベオン人びとはイスラエルの子孫しそんにあらずアモリ人びとの殘餘のこりなりしがイスラエルの子孫ひと〴〵昔むかし彼等かれらに誓ちかひをなしたり然しかるにサウル、イスラエルとユダの子孫ひと〴〵に熱心ねつしんなるよりして彼等かれらを殺ころさんと求もとめたり〘465㌻〙 3 即すなはちダビデ、ギベオン人びとにいひけるは我われ汝等なんぢらのために何なにを爲なすべきか我われ何なんの賠償つくのひを爲なさば汝等なんぢらヱホバの產業さんげふを祝しゆくするや 4 ギベオン人びと彼かれにいひけるは我儕われらはサウルと其その家いへの金銀きんぎんを取とらじ又󠄂また汝なんぢは我われらのためにイスラエルの中うちの人ひと一人ひとりをも殺ころすなかれダビデいひけるは汝等なんぢらが言いふ所󠄃ところは我われ汝なんぢらのために爲なさん 5 彼等かれら王わうにいひけるは我儕われらを滅ほろぼしたる人ひと我儕われらを殲たやしてイスラエルの境さかひの中うちに居留とゞまらざらしめんとて我儕われらにむかひて謀はかりごとを設まうけし人ひと 6 請󠄃こふ其人そのひとの子孫しそん七人にんを我儕われらに與あたへよ我儕われらヱホバの選󠄄えらみたるサウルのギベアにて彼等かれらをヱホバのまへに懸かけん王わういふ我われ與あたふべしと

7 されど王わうサウルの子こヨナタンの子こなるメピボセテを惜をしめり是こは彼かれ等らのあひだ即すなはちダビデとサウルの子こヨナタンとの間あひだにヱホバを指さして爲なせる誓ちかひあるに因よれり 8 されど王わうアヤの女むすめリヅパがサウルに生うみし二人ふたりの子こアルモニとメピボセテおよびサウルの女むすめメラブがメホラ人びとバルジライの子こアデリエルに生うみし五人にんの子こを取とりて 9 かれらをギベオン人びとの手てに與あたへければギベオン人びとかれらを山やまの上うへにてヱホバの前󠄃まへに懸かけたり彼等かれら七人にん俱ともに斃たふれて刈穫かりいれの初はつの日ひ即すなはち大おほ麥むぎ刈かりの初時はじめに死しねり

10 アヤの女むすめリヅパ麻󠄃布あさぬのを取とりて刈穫かりいれの初時はじめより其その屍しかばねの上うへに天てんより雨あめふるまでこれをおのれのために磐いはの上うへに布しきおきて晝ひるは空󠄃そらの鳥とりを屍しかばねの上うへに止とゞまらしめず夜よるは野のの獸けものをちかよらしめざりき 11 爰こゝにアヤの女むすめサウルの妾めかけリヅパの爲なせしことダビデに聞きこえければ
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12 ダビデ往󠄃ゆきてサウルの骨ほねと其その子こヨナタンの骨ほねをヤベシギレアデの人々ひと〴〵の所󠄃ところより取とれり是これはペリシテ人びとがサウルをギルボアに殺ころしてベテシヤンの衢ちまたに懸かけたるをかれらが竊ぬすみさりたるものなり 13 ダビデ其處そこよりサウルの骨ほねと其その子こヨナタンの骨ほねを携たづさへ上のぼれりまた人々ひと〴〵其その懸かけられたる者等ものどもの骨ほねを斂あつめたり 14 かくてサウルと其その子こヨナタンの骨ほねをベニヤミンの地ちのゼラにて其その父󠄃ちゝキシの墓はかに葬はうむり都すべて王わうの命めいじたる所󠄃ところを爲なせり比これより後のち神かみ其その地ちのため祈禱いのりを聽きゝたまへり

15 ペリシテ人びと復またイスラエルと戰爭いくさを爲なすダビデ其その臣僕けらいとともに下くだりてペリシテ人びとと戰たゝかひけるがダビデ困憊󠄂つかれ居をりければ 16 イシビベノブ、ダビデを殺ころさんと思おもへり(イシビベノブは巨󠄃人おほをとこの子等こどもの一人ひとりにて其その槍やりの銅あかがねの重おもさは三百びやくシケルあり彼かれ新あたらしき劒かたなを帶おびたり)〘466㌻〙 17 しかれどもゼルヤの子こアビシヤイ、ダビデを助たすけて其そのペリシテ人びとを擊うち殺ころせり是こゝにおいてダビデの從者じふしやかれに誓ちかひていひけるは汝なんぢは再ふたゝび我儕われらと共ともに戰爭いくさに出いづべからず恐おそらくは爾なんぢイスラエルの燈光あかりを消󠄃きさんと

18 此この後のち再ふたゝびゴブにおいてペリシテ人びとと戰たたかひあり時ときにホシヤ人びとシベカイ巨󠄃人おほをとこの子等こどもの一人ひとりなるサフを殺ころせり 19 爰こゝに復またゴブにてペリシテ人びとと戰たたかひあり其處そこにてベテレヘム人びとヤレオレギムの子こエルハナン、ガテのゴリアテの兄弟きやうだいラミを殺ころせり其その槍やりの柄えは機はたの梁はりの如ごとくなりき 20 又󠄂またガテに戰たたかひありしが其處そこに一人ひとりの身たけ長たかき人ひとあり手てには各おの〳〵六むつの指ゆびあり足あしには各おの〳〵六むつの指ゆびありて其その數󠄄かず合あはせて二十四なり彼かれもまた巨󠄃人おほをとこの生うめる者ものなり 21 彼かれイスラエルを挑いどみしかばダビデに兄弟きやうだいシメアの子こヨナタン彼かれを殺ころせり 22 是これらの四よ人にんはガテにて巨󠄃人おほをとこの生うめるものなりしがダビデの手てと其その臣僕けらいの手てに斃たふれたり
 608㌻ 

第22章

1 ダビデ、ヱホバが己おのれを諸もろ〳〵の敵てきの手てとサウルの手てより救すくひいだしたまへる日ひに此この歌うたの言ことばをヱホバに陳のべたり曰いはく 2 ヱホバはわが巖いはほわが要󠄃害󠄅えうがい我われを救すくふ者もの 3 わが磐いはの神かみなりわれ彼かれに倚賴よりたのむヱホバはわが干たてわが救すくひの角つのわが高たか櫓やぐらわが逃󠄄躱處のがればわが救主すくひぬしなり爾なんぢ我われをすくひて暴あらき事ことを免まぬかれしめたまふ 4 我われほめまつるべきヱホバに呼よばはりてわが敵てきより救すくはる 5 死しの波濤なみわれを繞かこみ邪󠄅曲よこしまなる者ものの河かはわれをおそれしむ 6 冥府よみの繩󠄂なはわれをとりまき死しの機檻わなわれにのぞめり 7 われ艱難なやみのうちにヱホバをよびまたわが神かみに龥よばはれりヱホバ其その殿みやよりわが聲こゑをききたまひわが喊呼さけび其その耳みゝにいりぬ 8 爰こゝに地ち震ふるひ撼うごき天てんの基もとゐ動うごき震ふるへりそは彼かれ怒いかりたまへばなり 9 煙󠄃けむり其その鼻はなより出いでてのぽり火ひその口くちより出いでて燒やきつくしおこれる炭󠄃すみかれより燃もえいづ 10 彼かれ天てんを傾かたむけて下くだりたまふ黑雲くろくもその足あしの下したにあり 11 ケルブに乘のりて飛とび風かぜの翼󠄅つばさの上うへにあらはれ 12 其その周󠄃圍󠄃まはりに黑暗󠄃やみをおき集あつまれる水みづ密雲あつきくもを幕まくとしたまふ 13 そのまへの光ひかりより炭󠄃すみ火び燃もえいづ 14 ヱホバ天てんより雷いかづちをくだし最いと高たかき者もの聲こゑをいだし 15 又󠄂また箭󠄃やをはなちて彼等かれらをちらし電いなびかりをはなちて彼等かれらをうちやぶりたまへり 16 ヱホバの叱咤せめとその鼻はなの氣吹いぶきの風かぜによりて海うみの底そこあらはれいで地ちの基もとゐあらはになりぬ 17 ヱホバ上うへより手てをたれて我われをとり洪水おほみづの中うちより我われを引ひきあげ 18 またわが勁つよき敵てきおよび我われをにくむ者ものより我われをすくひたまへり彼等かれらは我われよりも强つよかりければなり 19 彼等かれらはわが菑災わざはひの日ひにわれに臨のぞめりされどヱホバわが支󠄂柱󠄃ささへとなり 20 我われを廣ひろき處ところにひきいだしわれを喜よろこぶがゆゑに我われをすくひたまへり〘467㌻〙 21 ヱホバわが義ただしきにしたがひて我われに報むくい吾わが手ての淸潔󠄄きよきにしたがひて我われに酬かへしたまへり
 609㌻ 
22 其そはわれヱホバの道󠄃みちをまもり惡あしきをなしてわが神かみに離はなれしことなければなり 23 その律例さだめは皆みなわがまへにあり其その法憲のりは我われこれを離はなれざるなり 24 われ神かみにむかひて完全󠄃まつたかり又󠄂また身みを守まもりて惡あくを避󠄃さけたり 25 故ゆゑにヱホバわが義ただしきにしたがひ其その目めのまへにわが潔󠄄白きよくあるに循したがひてわれに報むくいたまへり 26 矜恤めぐみある者ものには爾なんぢ矜恤めぐみある者もののごとくし完全󠄃まつたき人ひとには爾なんぢ完全󠄃まつたき者もののごとくし 27 潔󠄄白きよき者ものには爾なんぢ潔󠄄白きよきもののごとくし邪󠄅曲まがれる者ものには爾なんぢ嚴刻󠄂きびしき者もののごとくしたまふ 28 難なやめる民たみは爾なんぢこれを救すくひたまふ然されど矜高たかぶる者ものは爾なんぢの目め見みて之これを卑ひくくしたまふ 29 ヱホバ爾なんぢはわが燈火ともしびなりヱホバわが暗󠄃くらきをてらしたまふ 30 われ爾なんぢによりて軍隊󠄄いくさの中なかを驅かけとほりわが神かみに由よりて石垣いしがきを飛とびこゆ 31 神かみは其その道󠄃みちまつたしヱホバの言ことばは純粋まじりなし彼かれは都すべて己おのれに倚賴よりたのむ者ものの干たてとなりたまふ 32 夫それヱホバのほか誰たれか神かみたらん我儕われらの神かみのほか孰たれか磐いはたらん 33 神かみはわが强つよき堅衆しうにてわが道󠄃みちを全󠄃まつたうし 34 わが足あしを麀󠄂めじかの如ごとくなし我われをわが崇邱たかきところに立たゝしめたまふ 35 神かみわが手てに戰たたかひを敎をしへたまへばわが腕うでは銅あかがねの弓ゆみをも挽ひくを得う 36 爾なんぢ我われに爾なんぢの救すくひの干たてを與あたへ爾なんぢの慈悲じひわれを大おほいならしめたまふ 37 爾なんぢわが身みの下したの步あゆみを恢󠄅廓ひろからしめたまへば我われ踝くるぶしふるへず 38 われわが敵てきを追󠄃おふて之これをほろぼし之これを絕たやすまではかへらず 39 われ彼等かれらを絕たやし彼等かれらを破碎くだけば彼等かれらたちえずわが足あしの下したにたふる 40 汝なんぢ戰たたかひのために力ちからをもて我われに帶おびしめ又󠄂またわれに逆󠄃さからふ者ものをわが下したに拜跪ひざまづかしめたまふ 41 爾なんぢわが敵てきをして我われに後うしろを見みせしめたまふ我われを惡にくむ者ものはわれ之これをほろぼさん 42 彼等かれら環󠄃視みまはせど救すくふ者ものなしヱホバを仰視あふげど彼等かれらに應こたへたまはず 43 地ちの塵ちりの如ごとくわれ彼等かれらをうちくだき又󠄂また衢間ちまたの泥どろのごとくわれ彼等かれらをふみにぢる
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44 爾なんぢわれをわが民たみの爭鬪あらそひより救すくひ又󠄂またわれをまもりて異邦󠄆人ことくにびと等らの首長かしらとなしたまふわが知しらざる民たみ我われにつかふ 45 異邦󠄆人ことくにびと等らは我われに媚こび耳みゝに聞きくと均ひとしく我われにしたがふ 46 異邦󠄆人ことくにびと等らは衰󠄄おとろへ其その衛󠄅所󠄃かためより戰慄ふるひて出いづ 47 ヱホバは活いける者ものなりわが磐いはは讃ほむべきかなわが救すくひの磐いはの神かみはあがめまつるべし 48 此この神かみわれに仇あたを報むくいしめ國々くに〴〵の民たみをわが下したにくだらしめたまひ 49 又󠄂またわが敵てきの中うちよりわれを出いだし我われにさからふ者ものの上うへに我われをあげまた强暴人あらきひとの許もとよりわれを救すくひいだしたまふ 50 是故このゆえにヱホバよわれ異邦󠄆人ことくにびと等らのうちに爾なんぢをほめ爾なんぢの名なを稱󠄄たゝへん 51 ヱホバその王わうの救すくひをおほいにしその受膏者あぶらそそぎしものなるダビデと其その裔すゑに永久とこしなへに恩めぐみを施ほどこしたまふなり〘468㌻〙

第23章

1 ダビデの最後をはりの言ことばは是これなりヱサイの子こダビデの詔言のりごと即すなはち高たかく擧あげられし人ひとヤコブの神かみに膏あぶらをそそがれし者ものイスラエルの善よき歌うた人びとの詔言のりごと 2 ヱホバの靈みたまわが中うちにありて言いひたまふ其その諭󠄄言さとしわが舌したにあり 3 イスラエルの神かみいひたまふイスラエルの磐いはわれに語つげたまふ人ひとを正たゞしく治をさむる者もの神かみを畏おそれて治をさむる者ものは 4 日ひの出での朝󠄃あさの光ひかりのごとく雲くもなき朝󠄃あさのごとく又󠄂また雨あめの後のちの日ひの光明かがやきによりて地ちに茁もえいづる新わか草くさごとし 5 わが家いへかく神かみとともにあるにあらずや神かみ萬よろづ具󠄄備そなはりて鞏固たしかなる永久とこしなへの契󠄅約けいやくを我われになしたまへり吾わが救すくひと喜よろこびを皆みないかで生しやうぜしめたまはざらんや 6 しかれども邪󠄅よこしまなる者ものは荊棘いばらのごとくにして手てをもて取とりがたければ皆みなともにすてられん 7 之これにふるる人ひとは鐵てつと槍やりの柯えとを其その身みに備そなふべし是これは火ひにやけて燒やけたゆるにいたらん

8 是等これらはダビデの勇󠄃士ゆうしの名ななりタクモニ人びとヤシヨベアムは三さん人にん衆しうの長かしらなりしが一いち時じ八百ぴやく人にんにむかひて槍やりを揮ふるひて之これを殺ころせり
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9 彼かれの次󠄄つぎはアホア人びとドドの子こエルアザルにして三さん勇󠄃士ゆうしの中うちの者ものなり彼かれ其處そこに戰たゝかはんとて集あつまれるペリシテ人びとにむかひて戰たたかひを挑いどみイスラエルの人々ひと〴〵の進󠄃すゝみのぼれる時ときにダビデとともに居ゐたりしが 10 たちてペリシテ人びとを擊うち終󠄃つひに其その手て疲つかれて其その手て劍かたなに固着つきて離はなれざるにいたれり此この日ひヱホバ大おほいなる救拯すくひを行おこなひたまふ民たみは彼かれの跡あとにしたがひゆきて只たゞ褫󠄃取はぎとる而巳のみなりき

11 彼かれの次󠄄つぎはハラリ人びとアゲの子こシヤンマなり一ある時ときペリシテ人びと一隊󠄄いつたいとなりて集あつまれり彼處かしこに扁󠄃豆あぢまめの滿みちたる地ちの處ところあり民たみペリシテ人びとのまへより逃󠄄にげたるに 12 彼かれ其その地ちの中なかに立たちて禦ふせぎペリシテ人びとを殺ころせりしかしてヱホバ大おほいなる救拯すくひを行おこなひたまふ

13 刈穫かりいれの時ときに三十人にん衆しうの首長かしらなる三さん人にん下くだりてアドラムの洞穴󠄄ほらあなに往󠄃ゆきてダビデに詣いたれり時ときにペリシテ人びとの隊󠄄たいレパイムの谷たにに陣ぢんどれり 14 其時そのときダビデは要󠄃害󠄅えうがいに居をりペリシテ人びとの先陣さきぞなへはベテレヘムにあり 15 ダビデ慕したひていひけるは誰たれかベテレヘムの門もんにある井ゐどの水みづを我われにのましめんかと 16 三さん勇󠄃士ゆうし乃すなはちペリシテ人びとの陣ぢんを衝つき過󠄃とほりてベテレヘムの門もんにある井ゐどの水みづを汲󠄂くみ取とりてダビデの許もとに携たづさへ來きたれり然されどダビデ之これをのむことをせずこれをヱホバのまへに灌そゝぎて 17 いひけるはヱホバよ我われ決きはめてこれを爲なさじ是これは生命いのちをかけて往󠄃ゆきし人ひとの血ちなりと彼かれこれを飮のむことを好このまざりき三さん勇󠄃士ゆうしは是等これらの事ことを爲なせり〘469㌻〙

18 ゼルヤの子こヨアブの兄弟きやうだいアビシヤイは三十人にん衆しうの首かしらたり彼かれ三百びやく人にんにむかひて槍やりを揮ふるひて殺ころせり彼かれ其その三十人にん衆しうの中うちに名なを得えたり 19 彼かれは三十人にん衆しうの中うちの最もつとも尊󠄅たふとき者ものにして彼等かれらの長ちやうとたれり然しかれども三さん人にん衆しうには及およばざりき

20 ヱホヤダの子こカブジエルのベナヤは勇󠄃氣ゆうきあり多おほくの功績いさほありし者ものなり彼かれモアブの人ひとの獅子しゝの如ごときもの二人ふたりを擊うち殺ころせり彼かれは亦また雪󠄃ゆきの時ときに下くだりて穴󠄄あなの中なかにて獅子しゝを擊うち殺ころせり
 612㌻ 
21 彼かれまた容貌かたち魁偉󠄅すぐれたるエジプト人びとを擊うち殺ころせり其そのエジプト人びとは手てに槍やりを持もちたるに彼かれは杖つゑを執とりて下くだりエジプト人びとの手てより槍やりを捩󠄃もぎとりて其その槍やりをもてこれを殺ころせり 22 ヱホヤダの子こベナヤ是等これらの事ことを爲なし三十勇󠄃士ゆうしの中うちに名なを得えたり 23 彼かれは三十人にん衆しうの中うちに尊󠄅たふとかりしかども三人にん衆しうには及およばざりきダビデかれを參議さんぎの中うちに列つらならしむ

24 三十人にん衆しうの中うちにはヨアブの兄弟きやうだいアサヘル、ベテレヘムのドドの子こエルハナン 25 ハロデ人びとシヤンマ、ハロデ人びとエリカ 26 パルデ人びとヘレヅ、テコア人びとイツケシの子こイラ 27 アネトテ人びとアビエゼル、ホシヤ人びとメブンナイ 28 アホア人びとザルモン、ネトバ人びとマハライ 29 ネトパ人びとバアナの子こヘレブ、ベニヤミンの子孫ひと〴〵のギベアより出いでたるリバイの子こイツタイ 30 ヒラトン人びとベナヤ、ガアシの谷たにのヒダイ 31 アルパテ人びとアビアルボン、バホリム人びとアズマウテ 32 シヤルボニ人びとエリヤバ、キゾニ人びとヤセン 33 ハラリ人びとシヤンマの子こヨナタン、アラリ人びとシヤラルの子こアヒアム 34 ウルの子こエリパレテ、マアカ人びとへペル、ギロ人びとアヒトペルの子こエリアム 35 カルメル人びとヘヅライ、アルバ人びとパアライ 36 ゾバのナタンの子こイガル、ガド人びとバニ 37 アンモニ人びとゼレク、ゼルヤの子こヨアブの武器ぶきを執とる者ものベエロデ人びとナハライ 38 ヱテリ人びとイラ、ヱテリ人びとガレブ 39 ヘテ人びとウリヤあり都すべて三十七人にん

第24章

1 ヱホバ復またイスラエルにむかひて怒いかりを發はつしダビデを感動かんどうして彼等かれらに敵對むかはしめ往󠄃ゆきてイスラエルとユダを數󠄄かぞへよと言いはしめたまふ 2 王わう乃すなはちヨアブおよびヨアブとともにある軍長ぐんのかしら等たちにいひけるは請󠄃こふイスラエルの諸すべての支󠄂派󠄄わかれの中うちをダンよりベエルシバに至いたるまで行ゆきめぐりて民たみを核󠄂しらべ我われをして民たみの數󠄄かずを知しらしめよ 3 ヨアブ王わうにいひけるは幾何いくばくあるともねがはくは汝なんぢの神かみヱホバ民たみを百ひやく倍ばいに增ましたまへ而しかして王わうわが主しゆの目めそれを視みるにいたれ然しかりといへども王わうわが主しゆの此事このことを悅よろこびたまふは何故なにゆゑぞやと
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4 されど王わうの言ことばヨアブと軍長ぐんのかしら等たちに勝󠄃かちければヨアブと軍長ぐんのかしら等たち王わうの前󠄃まへを退󠄃しりぞきてイスラエルの民たみを核󠄂しらべに往󠄃ゆけり〘470㌻〙 5 かれらヨルダンを濟わたりアロエルより即すなはち河かはの中なかの邑まちより始はじめてガドにいたりヤゼルにいたり 6 ギレアデにいたりタテムホデシの地ちにいたり又󠄂またダニヤンにいたりてシドンに旋めぐり 7 またツロの城󠄃しろにいたりヒビ人びととカナン人びとの諸すべての邑まちにいたりユダの南みなみに出いでてベエルシバにいたれり 8 彼等かれら國くにを徧あまねく行ゆきめぐり九ここの月󠄃つきと廿日はつかを經へてルサレムに至いたりぬ 9 ヨアブ人口じんこうの數󠄄かずを王わうに吿つげたり即すなはちイスラエルに劍かたなを拔ぬく壯士つはもの八十萬まんありき又󠄂またユダの人ひとは五十萬まんありき

10 ダビデ民たみの數󠄄かずを書かきし後のち其心そのこころ自みづから責せむ是こゝにおいてダビデ、ヱホバにいふ我われこれを爲なして大おほいに罪つみを犯をかしたりねがはくはヱホバよ僕しもべの罪つみを除のぞきたまへ我われ甚はなはだ愚おろかなる事ことを爲なせりと 11 ダビデ朝󠄃あさ興おきし時ときヱホバの言ことばダビデの先見者せんけんしやなる預言よげん者しやガデに臨のぞみて曰いはく 12 往󠄃ゆきてダビデに言いへヱホバ斯かくいふ我われ汝なんぢに三みつを示しめす汝なんぢ其その一ひとつを擇えらべ我われ其それを汝なんぢに爲なさんと 13 ガデ、ダビデの許もとにいたりこれに吿つげてこれにいひけるは汝なんぢの地くにに七年ねんの饑󠄃饉ききんいたらんか或あるひは汝なんぢ敵てきに追󠄃おはれて三月󠄃みつき其その前󠄃まへに遁󠄅にげんか或あるひは爾なんぢの地くにに三日みつかの疫病やくびやうあらんか爾なんぢ考かんがへてわが如何いかなる答こたへを我われを遣󠄃つかはせし者ものに爲なすべきかを決さだめよ 14 ダビデ、ガデにいひけるは我われ大おほいに苦くるしむ請󠄃こふ我儕われらをしてヱホバの手てに陷おちいらしめよ其その憐憫あはれみ大おほいなればなり我われをして人ひとの手てに陷おちいらしむるなかれ

15 是こゝにおいてヱホバ朝󠄃あさより集會あつまりの時ときまで疫病やくびやうをイスラエルに降󠄄くだしたまふダンよりベエルシバまでに民たみの死しねる者もの七萬人まんにんなり 16 天てんの使󠄃つかひ其その手てをエルサレムに伸のべてこれを滅ほろぼさんとしたりしがヱホバ此これ害󠄅がい惡あくを悔くいて民たみを滅ほろぼす天使󠄃てんのつかひにいひたまひけるは足たれり今いま汝なんぢの手てを住󠄃とどめよと時ときにヱホバの使󠄃つかひはヱブス人びとアラウナの禾場うちばの傍かたはらにあり
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17 ダビデ民たみを擊うつ天使󠄃てんのつかひを見みし時ときヱホバに申まうしていひけるは嗚呼あゝ我われは罪つみを犯をかしたり我われは惡あしき事ことを爲なしたり然しかれども是等これらの羊群ひつじは何なにを爲なしたるや請󠄃こふ爾なんぢの手てを我われとわが父󠄃ちゝの家いへに對むけたまへと

18 此この日ひガデ、ダビデの所󠄃ところにいたりてかれにいひけるは上のぼりてヱブス人びとアラウナの禾場うちばにてヱホバに壇だんを建󠄄たてよ 19 ダビデ、ガデの言ことばに隨したがひヱホバの命めいじたまひしごとくのぼれり 20 アラウナ觀望󠄇のぞみて王わうと其その臣僕しもべの己おのれの方かたに進󠄃すゝみ來きたるを見みアラウナ出いでて王わうのまへに地ちに伏ふして拜はいせり 21 かくてアラウナいひけるは何なにに因よりてか王わうわが主しゆ僕しもべの所󠄃ところにきませるやダビデひけるは汝なんぢより禾場うちばを買かひとりヱホバに壇だんを築きづきて民たみに降󠄄くだる災わざはひをとどめんとてなり〘471㌻〙 22 アラウナ、ダビデにいひけるはねがはくは王わうわが主しゆ其その目めに善よしと見みゆるものを取とりて献さゝげたまへ燔祭はんさいには牛うしあり薪たきゞには打禾車うちぐるまと牛うしの器うつはありと 23 アラリナこれを悉こと〴〵く王わうに奉呈󠄄さゝぐアラウナ又󠄂また王わうにねがはくは爾なんぢの神かみヱホバ爾なんぢを受納󠄃うけいれたまはんことをといふ 24 王わうアラウナにいひけるは斯かくすべからず我われ必かならず値あたひをはらひて爾なんぢより買かひとらん我われ費つひえなしに燔祭はんさいをわが神かみヱホバに献さゝぐることをせじとダビデ銀ぎん五十ごじふシケルにて禾場うちばと牛うしを買かひとれり 25 ダビデ其處そこにてヱホバに壇だんを築きづき燔祭はんさいと酬恩祭しうおんさいを献さゝげたり是こゝにおいてヱホバ其その地ちのために祈禱いのりを聽きゝたまひて災わざはひのイスラエルに降󠄄くだること止とゞまりぬ〘472㌻〙
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